2024 年 77 巻 8 号 p. e81-e88
国内で実施されている豚熱ワクチンの免疫獲得(テイク)には,ワクチン接種時の移行抗体が影響する.そこで豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)陰性農場において,子豚の移行抗体価と抗体応答の関係を調査した.その結果,移行抗体は,ワクチン開発時に明らかにされていたよりも中和抗体の産生量に負の影響を及ぼした.一方,ワクチンのテイク率は開発時に明らかにされていた成績と同程度であった.また,豚熱ワクチンを2回接種した群や豚サーコウイルス2型感染症に対するワクチンを事前に接種した群におけるワクチンテイクの正の効果は限定的であった.以上の結果から,PRRS陰性農場において豚熱ワクチンの接種による抗体産生に移行抗体が影響を及ぼすことが分かり,移行抗体を考慮して適切な時期にワクチンを接種することの重要性が再確認された.