1981 年 34 巻 1 号 p. 14-18
肝蛭卵検査法の一つである平法を実際に応用する立場から, いくつかの実験を行ない, その改良を試みた.まず, 沢過操作をより容易にするため平法に用いる遠心管に適合した直径2.5cm・60メッシュのふるいを試作し, これによる沢過状況を調べた.その結果, 金網に肝蛭卵が残る率はわずか数パーセントであり, 応用上問題はないものと考えられた.そして, このふるいを用いた平法による肝蛭卵検出率は, 64.22 (60.93~67.51)%であった.
つぎに, 術者の熟練度のちがいによって肝蛭卵検出数がどの程度異なるかを調べたところ, 全くの未経験者による検出虫卵数は熟練者のそれより少数であった.しかし, 数回の練習と処理操作のコッを教えられた後の, この未経験者の検査結果は, 熟練者のそれとほとんど変わらなかった.
渡辺法 (1953), 原法 (1969) および平法 (1978) の3法を比較したところ, 肝蛭卵検出数の多い順は, 平法, 渡辺法そして原法であった.平法には, 特殊なビーズや回転装置を必要とするが, 他の2法よりも鏡検する沈渣が少量であり, 実用的価値の高い検査法であることが明らかとなった.