日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
Print ISSN : 0446-6454
ISSN-L : 0446-6454
牛白血病ウイルス感染牛における沈降抗体の推移とウイルス証明
梶川 治小山 弘之吉川 博康宝達 勉椿 志郎桜井 康博吉川 尭斉藤 博
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 34 巻 9 号 p. 423-427

詳細
抄録

牛白血病ウイルスの感染を抗体の検出によって確認する場合, 抗体陽性牛は常に陽性を示し, 陰転することはないか, あるいは抗体価の変動があるかどうか, また抗体陰性牛は常に陰性を示すかどうか, ということが問題となる.これらの点に検討を加えると同時に, 抗体陽性牛から生れた子牛の抗体の消長と, 垂直感染の有無について検討を加えた.
牛白血病ウイルスに感染した8頭の抗体陽性牛 (うち2頭はリソパ球増多症を示す) を, 1~3年飼育した成績と, 牛白血病ウイルス感染牛の7頭から生れた子牛を, 約3カ月飼育した成績, さらには, 感染群と同居する, 非感染牛39頭の抗体陽転を観察した成績から, 下記の結果を得た.
(1) エーテル感受性のエソベロープ糖蛋白抗原に対する抗体陽性牛は, 全期間を通じて陰転することなく, 抗体価の変動も少なかった.(2) エーテル抵抗性のコアー蛋白抗原に対する抗体は, 終始陽性, または陰性を示す例と, 観察途中から陽転する例がみられた.(3) 末梢リンパ球からのウイルス分離と, 電子顕微鏡による培養リソパ球からのC-型粒子の産生は, 牛白血病ウイルス感染牛の全例に, 全期間を通じてみられた.(4) 妊娠前および妊娠期間中に, 牛白血病ウイルス感染をうけた母親から生れた子牛は, 全てエンベロープ糖蛋白抗原に対する抗体陽性を示すが, 出産2ヵ月以後より陰性となることから, この抗体は移行抗体と考えられる.(5) 母親は, ウイルス分離陽性を示すが, 子牛は, 7頭全例が陰性を示し, 牛白血病ウイルスの垂直感染が起こりにくいことを示している.したがって, 子牛の感染を知るには, ウイルス分離を平行して行なう必要がある.(6) 牛白血病ウイルス感染群と同居する, 非感染牛の同一個体について, 3~8カ月ごとに抗体調査を行なった結果, 抗体の陽転は, 各々14, 20, 23カ月後にみられ, 抗体陽転時には, 検査牛の全例から牛白血病ウイルスが分離された.

著者関連情報
© 社団法人 日本獣医師会
前の記事 次の記事
feedback
Top