日本獣医師会雑誌
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イヌに発生したクッシング症候群の診断と治療
田村 幸生山本 実孝木村 容子小泉 俊二尾内 宗次左向 敏紀本好 茂一杉山 公宏原田 隆彦
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1983 年 36 巻 9 号 p. 515-520

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抄録

全身性の脱毛, 腹囲膨満, 多渇症, 多尿症, 多食, 皮膚の弾力性の消失などを主徴としたトイ・プードルのクッシング症候群の自然発生例に遭遇し, その的確な診断法と治療法について検討を加え, 次の結果を得た.
1. 初診時の血液所見では白血球の増多, 好酸球とリンパ球の比率の減少, 高血糖, 高脂血症, GPT, ALP活性値の上昇, 血漿Eydrocortisoneの高値が認められた.
2. Rapid combined testの結果, デキサメサゾン負荷前のHydrocortisone値は20.0μg/dlで, 負荷後12時間目では9.0μg/dlと50%以上の抑制が認められ, ACTH負荷後1時問目では56.0μg/dl, 2時間目では60.5μg/dlと著しい増加がみられ, これらの所見から, 本症はACTH依存性の両側性副腎過形成であると診断した.
3. 最初の治療として, 片側副腎摘出手術を実施したが, 術後2週間目には残存する副腎の代償性機能充進が推察され, 臨床症状の軽減も認められなかった.
第2の療法として, 副腎毒性化合物であるo, p'-DDDの投与を行った. 週1回ずつ血漿Hydrocortisonc値をモニターしながら週1回の投与を6回実施したが, Hydrocortisoneの低下が認められなかったので, 10日間の連続投与を実施したところ, 食欲の減退, 泌尿回数の減少がみられたので, 投与を中止して再度Rapidcombinedtestを実施した. デキサメサゾン負荷前のHydrocortisone値は3.1μg/dlで, 投与後12時間目では2.2μg/dlとわずかに抑制が認められ, ACTH負荷にはまったく無応答であった.
4. 投与を中止して, 観察を続けたところ, 最終投与後2週間目には発毛の微候が認められ, クッシング症候群特有の血液所見も軽減した.

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