1983 年 36 巻 9 号 p. 533-537
Mesocestoides属の条虫は2種類の中間宿主を必要とすると思われる. 第1中間宿主として報告されているものはササラダニ類などの無脊椎動物であり, 第2中間宿主は両生類, 爬虫類, 鳥類, 哺乳類などの脊椎動物である.M. paucitesticulusの第1中間宿主と予想される土壌に生息する小動物 (ササラダニ類, 糞食昆虫類など) を採集して調査したが本条虫の寄生は認められなかった. また, スズムシ, コオロギ, ゴキブリなどに対する実験感染も成立しなかった. 第2中間宿主として鳥類と哺乳類を調査した結果, キジとヤマドリから幼虫を発見した. 幼虫は楕円形ないしハート形で, 大きさは1.2×2.3mm, 直径2-2.5mmの白色の虫嚢に入って, 宿主の内臓と筋肉に認められた. 終宿主はタヌキ, キツネ, 犬で, 犬では感染後13日で片節の排泄が認められた. 犬に感染させたときの本条虫の寿命は8年6ヵ月であった.