日本獣医師会雑誌
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「獣医学と魚病」に関するシンポジウム記録 (VII)
野鳥における伝染性膵臓壊死症ウイルスおよび伝染性造血器壊死症ウイルスの存在の可能性, および鳥類と哺乳類の両ウイルスに対する感受性
伊澤 久夫石黒 信良児玉 洋小沼 操見上 彪
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1985 年 38 巻 1 号 p. 53-58

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抄録
1977年から1980年までの4カ年に北海道で採取した野生水禽 (主としてカモ類) およびカラスならびにトビの血清と, 伝染性膵臓壊死症ウイルス (infectious pancreatic necrosis virus;IPNV) ならびに伝染性造血器壊死症ウイルス (infectious hematopoietic necrosis virus;IHNV) とを免疫拡散 (immunodiffusion;ID) 試験によって反応させたところ, 野生水禽血清において特異的とみられる沈降線が出現した. 沈降線の出現率は, 5株のIPNVのいずれかに対して58.1%, またIHNVに対して3.2%であった. ID陽性血清は5株のIPNVを中和したが, 力価はきわめて低いものであった. これら血清は伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスをまったく中和しなかった. 魚肉を給与されたミンクの血清には, IPNVおよびIHNVに対するID抗体を認めなかった.
IPNVあるいはIHNVを接種した発育アイガモ卵からはウイルスは回収されなかった. また, 両ウイルスを接種したマウス, ヌードマウスおよびウサギはみるべき臨床変化を示さず, 血液, 各種ぬぐい液および諸臓器からウイルスは回収されなかった.また, 両ウイルスを接種した哺乳類由来の各種株化細胞に細胞変性効果は発現しなかった.
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