1987 年 40 巻 7 号 p. 513-518
1985年12月23日から1986年1月27日にかけて, 青森県東津軽郡平内町の5軒のめん羊専用飼育農家において, サフォーク種の分娩めん羊30腹37頭中, 21腹26頭に異常産子や死産が発生した.すなわち, 異常産子6頭にほぼ共通して, 四肢関節・球節部の彎曲や屈曲, 脊柱のS字状彎曲, 大脳内水頭症, 大脳のグリア結節, 躯幹筋線維の変性と蛇行等の所見が認められ, アカバネウイルスの感染を疑い, 同居成雌めん羊21頭と異常産子4頭について血清学的検査を実施したところ, アカバネウイルス中和抗体が, 成雌めん羊21頭中19頭に8~256倍, 初乳摂取産子3頭では16~32倍, 未摂取産子1頭では64倍の範囲で認められた.以上の結果から, めん羊に発生した異常産子や死産はアカバネ病であることが判明した.
疫学調査では, 青森県においては1984年までにアカバネ病の発生はなかったが, 県下の牛で1985年9月下旬以降, 県内各地で抗体陽転が認められたことから, 今回, アカバネ病の発生があっためん羊群へのウイルス侵入時期は, 1985年9月ごろと推定された.また, 発生めん羊群は, 7月下旬から8月下旬に交配されていることから, 胎子日齢が20~50日前後に感染したものと推定された.
なお, 9月上旬以降交配された成雌めん羊46頭には異常産の発生はなかった.