抄録
1986, 1987および1988年に牛流行熱ウイルスやChuzanウイルスなどの牛に感染するアルボウイルスを分離する目的で広島県内にそれぞれ108, 125および60頭配置したおとり牛からウィルス分離を試みた. その結果, 1986年に1株, 1987年に2株および1988年に1株の計4株のウイルスが分離された. 分離ウイルス4株はいずれもエーテル, クロロホルムおよびデオキシコール酸塩に感受性であり, pH3.0では失活し, pH7.4および8.0では安定であった.分離ウイルスは孔径450および200nmのメンブランフィルターを容易に通過したが, 孔径100nmのフィルターの濾過では若干力価の低下がみられ, 孔径50nmのフィルターは通過しなかった. 分離ウイルスの増殖は5-iodo-2-deoxyuridineによって抑制されなかった. 電子顕微鏡による分離ウイルスの形態は弾丸型であった. 分離ウイルスは血清学的に4株とも同一であり, ヌカカおよび蚊から分離されたFukuokaウイルスと交差した. 以上の所見から分離ウイルスはラブドウイルスの一員であるFukuokaウイルスと同定された.
1987年, おとり牛 (14牛群) の抗体調査では6月採材時の抗体陽性牛群は5牛群, 抗体陽性率16.7~69.2%, 11月採材時の抗体陽性牛群は10牛群, 抗体陽性率9.1~76.9%であった.