抄録
野外における低脂肪乳泌乳牛と対照牛の粗飼料変換に伴う臨床生化学的観察を行った. その結果, 血液所見では低脂肪乳泌乳牛と対照牛の間に大きな差はみられなかったが, 低脂肪泌乳牛で粗飼料変換時に血清遊離脂肪酸の増加が認められた. 第一胃内所見では低脂肪乳泌乳牛と対照牛のpH, プロトゾア数に差はみられなかったが, 調査期間を通じて低脂肪乳泌乳牛はVFA産生量, 酢酸/プロピオン酸割合の低下が認められた. 生乳中脂肪酸組成は対照乳に比較して低脂肪乳でパルミチン酸以下の短鎖飽和脂肪酸の減少がみられた. これらの結果から今回の低脂肪乳は第一胃内VFA産成量と酢酸/プロピオン酸割合の低下から乳脂肪中の短鎖飽和脂肪酸の減少に起因したものと考えられた.