抄録
無機と有機セレニウム (Se) 剤の投与効果を検討するため, 妊娠羊に対して亜セレン酸ナトリウム (E・Se剤;Seとして6mgと酢酸d-a-トコフェロール120mg) とセレノ-L-メチオニン (Seとして6mg) を分娩前1ヵ月より2週間隔で2回筋肉内投与を行って, 投与後の血清Se値と血液グルタチオンペルオキシダーゼ (GSH-Px) 活性値の検討を行った.
血清Se値は両投与群とも投与後に著名な増加を示し, 血液GSH-Px活性値ではセレノメチオニン投与群が2週目より有意に上昇し, かっ亜セレン酸ナトリウム投与群より有意な高値であった. 出生子羊の血清Se値と血液GSHPx活性値も高値を示し, 特にセレノメチオニン投与群が明瞭な高値であったが, 血中トコフェロール値は投与群問に差が認められなかった. 乳汁中Se値もSe剤投与例が高値を示し, 特にセレノメチオニン投与群がさらに高値であった.
以上の成績から, セレノメチオニンは亜セレン酸ナトリウムよりGSH-Pxへの利用性が高く, かつ胎盤移行も良好であると判断された.