日本獣医師会雑誌
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43 巻, 11 号
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  • 平原 正, 安原 寿雄, 松井 修, 出水田 昭弘, 吉木 研一, 大田 外之, 宮田 由美, 山中 盛正, 児玉 和夫, 中井 正久, 佐 ...
    1990 年 43 巻 11 号 p. 779-783
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    17道府県から1976年, 1982年および1986年から1989年の間に採集した4ヵ月齢以上の肥育豚と繁殖母豚, 合計760例の血清について, 豚アデノウイルスの1型 (25株), 2型 (A47株), 3型 (6618株), 4型 (München株) および5型と提唱中のHNF70株に対する中和抗体を測定した.
    年度別にみた血清型ごとの抗体陽性率をみると, 1型では12.6~49.3%を示し, 2型では52.5~66.7%であった. 3型では1976年から1987年まで85.0%以上の高い陽性率から1988年以後約50%へ低下した. 4型では1976年に陽性豚はみられなかったが, 1982年に10%を示し年々上昇して1989年には43.8%を示した. 5型では75.0~95.0%の高い陽性率で推移した.
    府県別にみた各血清型に対する抗体陽性率は, 同一地方において類似したパターンを示した. 80%以上の高い抗体陽性率は, 5型では北海道, 東北, 関東, 甲信越, 近畿, 中国, 九州, 沖縄の8地方で認められた. 3型では北海道, 東北, 中部, 中国, 四国, 九州の6地方で, 2型では中部と近畿の2地方で, 1型では中部地方で高い陽性率であった. しかし, 4型については80%以上の高い陽性率を示す地方は認められなかった.
  • 大島 茂幸, 納 敏, 一条 茂
    1990 年 43 巻 11 号 p. 784-788
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    無機と有機セレニウム (Se) 剤の投与効果を検討するため, 妊娠羊に対して亜セレン酸ナトリウム (E・Se剤;Seとして6mgと酢酸d-a-トコフェロール120mg) とセレノ-L-メチオニン (Seとして6mg) を分娩前1ヵ月より2週間隔で2回筋肉内投与を行って, 投与後の血清Se値と血液グルタチオンペルオキシダーゼ (GSH-Px) 活性値の検討を行った.
    血清Se値は両投与群とも投与後に著名な増加を示し, 血液GSH-Px活性値ではセレノメチオニン投与群が2週目より有意に上昇し, かっ亜セレン酸ナトリウム投与群より有意な高値であった. 出生子羊の血清Se値と血液GSHPx活性値も高値を示し, 特にセレノメチオニン投与群が明瞭な高値であったが, 血中トコフェロール値は投与群問に差が認められなかった. 乳汁中Se値もSe剤投与例が高値を示し, 特にセレノメチオニン投与群がさらに高値であった.
    以上の成績から, セレノメチオニンは亜セレン酸ナトリウムよりGSH-Pxへの利用性が高く, かつ胎盤移行も良好であると判断された.
  • 白川 ひとみ, 長野 正弘, 神田 雅弘, 難波 範之
    1990 年 43 巻 11 号 p. 789-792
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1988年4月, 1酪農家の151日齢の子牛1頭が下痢を主徴とする長期の消化器障害により廃用された.糞便検査の結果鞭虫卵が認められ, そのEPG値は1,000であった.剖検により, 盲腸から結腸にかけて牛鞭虫 (Trichuris sp.) の濃厚寄生 (盲腸5cm2当たり45匹) と寄生部位の粘膜肥厚や結節形成を認あた.病理組織学的には粘膜固有層の水腫性肥厚と粘膜下織内の虫体を認め, また一部に粘膜上皮の脱落や細胞浸潤もみられた.これらの所見により, この慢性下痢の主因は牛鞭虫寄生によるものと思われた.
    北九州家畜保健衛生所管内における子牛の鞭虫の寄生状況を調べるため, 21戸79頭について蔗糖液遠沈浮遊法で糞便検査を行った.その結果, 8戸22頭の子牛に鞭虫卵を認めた.糞便1gの虫卵数は1-1, 647の範囲にあり, 虫卵数の多い3頭 (1, 647;577;196) が下痢や軟便を示していた.
    虫卵陽性牛5頭にイベルメクチンを投与した結果, 虫卵数の著しい減少または陰転がみられ高い駆虫効果が認められた.ネグホン投与牛でも虫卵数は減少したが, 投薬した2頭中1頭では陰転しなかった8病状を示した3頭は全て投薬後回復した.
  • 田口 清, 石田 修, 鈴木 隆秀, 北島 哲也, 高田 秀文, 高橋 功, 松尾 直樹, 工藤 克典, 岩田 一孝, 園中 篤, 安里 章
    1990 年 43 巻 11 号 p. 793-797
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    子牛の腰の感染症50例に対して手術を実施した. これらの腰の感染症は腹腔外の臍および臍帯の感染と腹腔内の遺残腰帯の感染に分けられた. 前者では臍の膿瘍形成, 慢性の臍炎, 臍炎または臍膿瘍と臍ヘルニアの合併, 後者では膀胱と交通しない, あるいは交通する尿膜管の感染, 臍動脈の膿瘍形成, 肝と交通しない, あるいは交通する腰静脈の感染, および尿膜管と臍静脈両方の感染に分類された. 肝と交通する臍静脈の感染では14例中5例のみ治癒したが, その他では全例治癒した. 腹腔深部の触診に加えて陽性造影によるX線検査や超音波検査は腹腔内の遺残臍帯や腹部臓器への感染波及の診断に有用であった.
    子牛の腰の感染症では感染菌の検査をしながら感染を十分コントロールして摘出手術を実施すれば良好な成績が得られると考えられた. 肝と交通する臍静脈の感染では肝感染の早期診断と治療法の検討が必要である.
  • 鈴木 實, 七條 喜一郎, 竹内 崇, 斎藤 俊之, 梅村 孝司, 島田 章則
    1990 年 43 巻 11 号 p. 798-801
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    臨床症状から中枢神経系の疾患が疑われた黒毛和種子牛2例のEEGについて検討した. 子牛は病理組織学的検査の結果, 水頭症および孔脳症の併発が1例に, 水頭症と白質の菲薄化が他の1例に認められた.
    EEG検査では, 2例に共通して高振幅徐波の出現と速波の減少がみられた. また, 孔脳症および白質の菲薄化の存在する領域に一致して局在性の異常波が出現した. これらの異常波形のみから水頭症の程度を判定することは不可能であったが, 皮質の機能低下を推察することは可能であり, 水頭症のスクリーニングテストとしてEEG検査は有用であると考えられた
  • 町田 登, 山我 義則, 籠田 勝基
    1990 年 43 巻 11 号 p. 802-804
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    聴診によって不整脈が認められた白血病牛の心電図検査を実施した結果, 心房細動であることが確認された. 心臓の病理学的検索では左右両心房壁に腫瘍細胞が広く浸潤しており, 加えて洞結節周囲にも白血病性浸潤が著しいため固有心房筋と洞結節の特殊心筋線維とのっながりは完全に途絶えていた. これらの所見は本例における心房細動の発症を説明するうえで意義あるものと示唆された.
  • 杉山 広, 松本 正博, 堀内 貞治, 冨村 保
    1990 年 43 巻 11 号 p. 808-811
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    ウェステルマン肺吸虫 (2倍体型) のメタセルカリア20個を27頭の猫に感染させ, 感染後1時間から245日まで経日的に剖検して虫体の寄生部位を詳細に調べたところ, 虫体は小腸壁を通過して腹腔に入り, 一旦躯幹後半部の骨格筋に侵入, 再び腹腔に出現し, 横隔膜, 胸腔を経て肺に移行するものと考察された. 虫体の肺への侵入は感染後早いものでは22-28日に開始し, 遅いものでも49日にはほぼ完了することが明らかとなった. さらにメタセルカリア投与後, 糞便内に虫卵が初めて検出されるまでの日数は平均66日であり, 虫体が肺に到達してから性成熟に達して産卵を開始するまでには, さらに30日前後の経過を要することが示唆された.
  • 小林 栄樹, 渡邉 隆之, 黒川 知, 鈴木 路夫, 廣瀬 和彦, 横山 敦史, 佐藤 久聡, 斉藤 博
    1990 年 43 巻 11 号 p. 815-819
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    豚丹毒に対する抗体測定法としての生菌発育凝集反応 (GA) に対し超音波処理抗原を用いたELISA法を導入し, その成績を比較, 検討した. ELISA用抗原としては豚丹毒菌県株 (血清型: 5) の超音波処理抗原を用い, 121例の豚についてELISA法による抗体価 (ELISA抗体価) とMarienfelde株 (血清型: 1a) を用いた生菌発育凝集反応による抗体価 (生菌発育凝集素価) を測定し比較検討したところ, ELISA抗体価と生菌発育凝集素価との間には高い相関性が得られた. このELISA用抗原を用い母豚別子豚の生後日齢と抗体価の推移を観察したところ, 母豚から子豚への移行抗体は子豚の個体により大きく変動することが明らかにされたが, それらの移行抗体はいずれも生後約50日齢で消失することが確認された. 現在の弱毒生菌ワクチンが予防に用いられる限り, この移行抗体の消失時期に留意してワクチネーションを実施することが望ましいと結論された.
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