1990 年 43 巻 8 号 p. 591-594
上皮小体機能亢進症を伴った腎不全犬の症例に遭遇した. 症例は, 持続性の嘔吐を主訴として来院し, 臨床検査では血液尿素窒素, 血清クレアチニン, 無機リンの著増とカルシウムの著減が特徴的であった. また, 同時に非再生性の貧血も認められた. 症例の死後の病理学的検査では, 腎臓は間質性腎炎を呈しており, 残存している尿細管内にはエチレングリコール中毒で認められるシュウ酸カルシウムに酷似した結晶が観察された. 上皮小体は, 異形性のない主細胞の著しい増生により肥大していた. 肋骨助軟骨結合部においては, 関節軟骨ならびに滑膜は壊死していた. 以上の臨床検査ならびに病理学的検索の結果から本症例は, 上皮小体機能亢進症を伴った慢性の腎不全と考えられた.