日本獣医師会雑誌
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卵胞刺激ホルモンと妊馬血清性性腺刺激ホルモンによる牛の過剰排卵誘起
大久 範幸高田 直和沼辺 孝吉村 格石川 勇志
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キーワード: 過剰排卵, FSH-P, PMSG, 採卵,
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1992 年 45 巻 7 号 p. 471-475

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抄録

供胚牛の過剰排卵処理効果に係る各種要因を究明するためホルスタイン種延べ39頭, 黒毛和種延べ313頭の計352頭を実験に用いた. 過剰排卵誘起のための性腺刺激ホルモンとして卵胞刺激ホルモン (FSH, 豚下垂体性製剤FSHP) と妊馬血清性性腺刺激ホルモン (PMSG) を用い, これらの投与量および反復使用の影響, 供胚牛の年齢および採卵季節について検討した. また, あわせて人工授精の回数および種雄牛が正常胚率に及ぼす影響について検討した. FSH-PとPMSG処置による回収卵数はそれぞれ8.7±7.8個 (S.D.) と8.6±7.7個, 正常胚数は5.1±5.8個と4.6±4.9個で両処理群の採卵および正常胚回収数に有意差 (P<0.05) は認められなかった. FSH-Pの投与量による回収卵数と正常胚数は黒毛和種の28mgと36mg投与ではそれぞれ5.5±6.5, 2.0±3.6と8.0±5.7, 4.1±3.8, ホルスタイン種の36mgと48mg投与量で7.7±6.6, 4.4±5.1と9.4±7.8, 5.2±4.9となり, FSH-Pの投与量の間に有意差 (P<0.05) は認められなかった。性腺刺激ホルモンを反復使用した場合の採卵成績はPMSGの3回目処理で回収卵数が1回目に比較して有意な減少 (10.6±5.4対4.3±4.2, P<0.05) を示したが, FSH-Pにおいては有意差 (P<0.05) は認められなかった. 人工授精回数による正常胚率は1, 2, 3, 4回授精でそれぞれ56.8, 48.4, 53.0, 48.8%となり, 授精回数と正常胚率との間に特に関係は認められなかった. 4頭の種雄牛別による正常胚率はそれぞれ61, 46, 51, および80%となり個体間で大きな変動がみられた. 年齢別にみると, 2歳以下と9歳以上の供胚牛では正常胚数および正常胚率がそれぞれ2.8個, 38.4%と2.6個, 30.8%であったのに対し, 3~4歳ではこれが5.9個, 57.5%となり有意な増加 (P<0.01, P<0.05) がみられた. 採卵季節別では各時期間に有意差 (P<0.05) はみられなかったが, 7~9月に回収卵数, 正常胚数の低下する傾向がみられた.

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