臨床獣医師が第四胃変位と診断し, 加療後重症と判断した乳牛 (ホルスタイン種) 47頭に補液を主とする治療を行った後, 大網右腹壁固定術を実施した.今回は消化器の捻転を伴った7頭を除いた40頭について調査し, 29頭が回復し11頭が予後不良であった.予後不良の原因や予後の指標を探るため臨床経過, 臨床検査および病理解剖所見を検討した.予後不良群は回復群に比べ初診時に臨床症状が重度であり, 血中尿素窒素, 総ビリルビン, 無機リンが高く, アルブミン, A/G, カリウムが低かった.予後不良群は手術後に好中球数, 血中尿素窒素, アルカリフォスファターゼが高く, リンパ球数, アルブミン, A/G, 総コレステロールが低かった.病理解剖所見では腹膜炎, 第三胃炎, 胸膜肺炎, 脂肪肝がみられた.以上の成績から初診時, 手術後のいくつかの臨床検査所見が予後の指標として示唆された.