1993 年 46 巻 6 号 p. 492-494
8歳齢の雌ヨークシャテリア (症例1) および14歳齢の雌シェトランドシープドッグ (症例2) が, いずれも頑固な食餌後の嘔吐を主訴として来院した. どちらも経過は消耗性で, 保存ポ法によって好転しなかった. 2症例ともX線造影で幽門狭窄が疑われ試験開腹術を実施した. 症例lでは幽門部管腔内にカリフラワー状の組織が増生し, 症例2では漿膜面に球形腫瘤が認められた. これらの異常構造物はいずれも腫瘍性病変と思われ, 幽門部通過障害の原因と考えられた. 生検による病天診断により, 症例1は腺癌, 症例2はリンパ肉腫と診断した. 犬の胃腫瘍はまれであり症状に特徴を欠くことなどから, 早期発見は困難だが, 高齢犬の頑固な嘔吐では本疾患も疑って精査すべきと考えられた.