2005 年 58 巻 11 号 p. 763-767
と畜解体された21~77カ月齢の黒毛和種牛にクローディン16 (CL-16) 欠損症1型ホモ接合体6例を認めたので, 腎臓について病理学的に観察した. 3例が発育不良および削痩を呈していたが, 残りの3例には生体所見において著変は認められなかった. いずれの症例も, ほぼ同様の形態学的特徴を有する腎病変を呈していた. 肉眼的に両側腎は矮小化し, 表面は顆粒状に凹凸を呈していた. 病理組織学的には, 皮質から髄質外層にかけて, 索状~巣状の限局性病巣が散在していたが, 病変の程度は個体によりさまざまであった. 病巣領域では, 小型尿細管および基底膜の肥厚を伴った不整形尿細管が集簇し, その間質は増幅し未分化な間葉系細胞が存在していた. これらの病理組織学的所見より, 腎尿細管異形成症と診断した. 今回検索した6例では, 腎病変および臨床兆候の発現の程度は多様であり, 黒毛和種牛のCL-16欠損遺伝子ホモ保有に対応する形質発現の不規則性が示唆された.