日本獣医師会雑誌
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成犬に発生したNeospora caninum感染症の1例
小山田 敏文光本 恭子筏井 宏実朴 天鏑小山田 隆大志田 守太田 亟慈吉川 博康
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キーワード: 成犬, 髄膜脳脊髄炎
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2006 年 59 巻 12 号 p. 837-842

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抄録

進行性の両側性後躯麻痺を呈し3カ月間の経過で死亡した7歳, 雄のゴールデン・レトリバーを病理学的ならびに遺伝子学的に検索し, N. caninum感染症と診断した.中枢神経系全域に原虫性のcystないしpseudocystの形成を伴った非化膿性髄膜脳脊髄炎が多発していた.病巣は特に小脳および脳幹に主座していた.一部筋組織にもpseudocystの形成を伴った非化膿性筋炎巣が存在していた.pseudocyst内の虫体は免疫組織化学的にN. caninum強陽性で, 電顕的にはN. caninumに特徴的な微細構造が観察された.Nested PCRにより得られた原虫のDNA塩基配列は, 既知のN.caninumの配列と98.2%の相同性を示しており, N. caninum感染と同定された.以上, 本症例は成犬に発生したN.caninum感染症のわが国初報告例である.

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