1955 年 8 巻 3 号 p. 113-117
めん山羊脳脊髄糸状虫病, いわゆる腰麻痺の予防法は, 蚊の媒介で感染したセタリアが, 中枢神経に迷入して発症するまでの期間 (潜伏期) に駆虫剤を注射して発病を予防してきたが, 潜伏期が短いものでは2-3週間であることと, 使用する薬剤が一般に, 中毒量に近い量を与えても完全に殺滅しないために, 予防注射の効果は極めて不完全であった. しかも, 同じ予防注射を毎年数回繰返ししている. 私らは, 本病の病原体となる指状糸状虫を自然界から絶滅させたならば, 本病ばかりでなく関連した病気, の寄生虫性腰痿・溷晴虫病・牛の異所迷入による疾病などが同時に予防できるという, 理想論を野外に応用してみた. 本法は従来机上の空論と考えられてきたが, 駆虫剤の進歩によって, 現実の段階に一歩進んだこととなる.
本法は昭和29年度にも実施したが, 予想通り, セタリア陽性牛は第1年度の分度の1に減少し, 安い費用で予防効果をえている.