日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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ひな白痢菌ファージに関する研究 : IV. ひな白痢菌のファージ・レセプターについて
坪倉 操
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1965 年 27 巻 6 号 p. 309-315

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抄録
第II報で,II・III群ファージに対する感受性によって,ひな白痢菌の亜型が同定できることを述べた.これについて,単に溶菌現象の面だけでなく,その特異性の本質を明らかにすることは,ファージ対亜型の関係を一層明瞭にするものと考えられ,著者が意図するファージと,ひな白痢菌122抗原のFormVariationとの関係を究明する上に,重要な資料となる.本試験では,ファージ・レセプターを明らかにする目的で,各亜型の菌体より分離した脂質,多糖体,蛋白質,およびこれらを抽出した残りの菌体を用いて,溶菌阻止作用を調べ,次の成績を得た.I)ファージ感受性菌が所有する抗原特異多糖体が,当該ファージの溶菌性を阻止する.すなわち,II群ファージはSおよびV型菌の,III群ファージはV型菌の多糖体によって,溶菌性が阻止された.一方,IIおよびIII群ファージに溶菌されないI型菌より得た分画は,両群のファージに対し,全く活性を示さない.2) ファージ爾性菌の多糖体は,ファージに対する溶菌阻止作用を消失した.これは耐性菌交叉試験の所見と良く一致する.3)正常な菌体抗原が失われているR型菌は,ファージ感受性をもたない.4)各亜型のひな白痢菌,ファージ耐性菌および鶏チフス菌の多糖体を構成する単糖は,定性的にはすべて同一であって,それぞれGlucosaminc,Galac一toscクGlucosc,Mannose,Xy10sc,RhamnoscおよびTyvcIoscが検出されるが,ファージ感受性を決定する特異的な単糖の存在は認められない.したがって,ファージ・レセプターは,単糖の立体構造の差によって決定するものと考えたい.本論文は,北海道大学審査学位論文で,規定に基づ1公表する.
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