抄録
ニワトリコクシジウムを経口的に1回感染させたヒナの摘出消化管について, Magnus 法により, アセチルコリンに対する収縮反応性を測定し, 消化管各部位ごとに原虫寄生との関連性を検討した. E. maxima 感染6日後に臨床症状は最も重篤で, 小腸全域の絨毛粘膜固有層にオーシストが認められた. この時期における消化管の収縮反応性は, 小腸上部で著しく低下し, 中部および下部でも低下の傾向にあった. 反応性の変化の強さは, 原虫寄生数の多少とは関連性が少なく, 消化管組織内に内在するなんらかの要因の関与が推測された. E. necatrix 感染5日に臨床症状は最も重篤で, 小腸全域の粘膜下組織にシゾントが多数寄生し, 宿主組織を破壊して出血がみられた. 消化管の収縮反応性は小腸上部で著しく低下し, 中・下部でも低下した. 感染10日後には, 小腸各部の原虫の減少し, 臨床症状はほぼ回復した. しかし反応性は, 小腸上部では回復せず, 中・下部では著しく低下した. 盲腸ではオーシストの寄生が認められ, 反応性は低下の傾向であった. 4種のコクシジウム感染後の症状の極期における, 小腸上部および下部の収縮反応性を信頼楕円を描いて比較すると, E. tenella または E. acervulina 感染の場合と, E. maxima または E. necatrix 感染の場合とでは, 異なる結果が得られた. これは, 小腸上部における組織学的寄生位置の差異と収縮反応性との関連性が, 大きく寄与しているためと考えられる. 謝辞: 統計解析を行なっていただいた井上俊昭氏, 実験に協力された松尾良子氏に感謝する.