Metastrongylus apri のX線5×10
4R 照射感染子虫を, 正常モルモットに1頭当たり2,000隻ずつ経口接種した. その後経時的に剖検し, 主としてペプシン消化法, また補足的には組織学的方法によって, これらの子虫の体内移行態度を検討した. この成績を前報[4]の正常子虫のそれと比較検討し, 次の結果を得た. 照射子虫は接種後1~3日目には, 正常子虫とほぼ同一部位から, ほぼ同数検出された. しかし盲腸, 直腸上部および大網からの虫体の消失は, 正常子虫のそれより約2~3日遅れた. 肺には5~12日目に, ごく少数の虫体を認めたに過ぎない. なお胸腔, 右心血および小腸からは, 虫体はまったく検出されなかった. 全般に虫体の発育は劣り, 肺を除く他の部位, 中でも腸壁および大網では, 多くの虫体は第4期に達したが, 第4期後期にまで成長するものはほとんどなかった. 肺で検出された虫体は, すべて第5期であったが, 正常子虫のそれより成長が劣り, 15日目以後には認められなくなった. 以上の所見から, X線照射子虫のモルモット体内移行態度は, 次のようにまとめられる. すなわち, 照射子虫は正常子虫と同時期に, 同様に腸壁から侵入するが, その後の発育, 特に第4期から第5期への発育が阻害される. しかし第4期としての生存期間は, 正常子虫のそれより約2~3日延長し, それらは主として盲・結腸壁および大網で捕捉されて死滅, 吸収されるものと考えられる. 一部の子虫は肺に達し, 第5期幼若虫となるが, 成虫には成り得ずに死滅し, 吸収または排泄されるものと考えられる. 本論文の要旨は, 第37回日本寄生虫学会総会(京都, 1968年)において発表した.
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