抄録
心縦軸{こ沿った双極誘導(A-B誘導)心電図におけるQRS混合波の波型は, 動物種によって異なるばかりでなく, それぞれの発生過程において特徴的な変化を示す. すなわち, ニワトリとヤギではRs型に始まり, RS型を経て, 発生の後半にrS型で安定する. 一方, イヌでは, 胎生期から新生子期にはRS型を示しているが, 出生後数日を経てRs型で安定する. このような経過中におけるそれぞれの動物について, 左右の心室重量比, 心表面単極誘導心電図, 胸部単極誘導心電図および心室遊離壁におけるプルキンエ線維の発達の模様を経時的に追跡して, QRS混合波の波型変遷との関係について吟味した. その結果, イヌの場合には, 新生子期における左心室の急激な発達と関連するが, ニワトリとヤギにみられる波型の変遷は, 心臓の量的変化に起因するものではなく, 胎生期後半にプルキンエ線維が心内膜側から中層, 外層へと分布していく過程と対応することが推定された. これらの結果から, A-B誘導心電図におけるQRS混合波の波型にみられる, 動物種による相違と心室遊離壁内におけるプルキンエ線維の分布状態との間に関連のあることが示唆された.