日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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ネコ細胞培養から検出されたfeline syncytial virusについて
望月 雅美小西 信一郎
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1979 年 41 巻 4 号 p. 351-359,362

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抄録

細胞培養に供した, 一見正常な仔ネコの腎および肝より2株のウイルスを分離した. これは本邦における, サル以外の動物からfoamy agentを検出した最初の分離報告である. 本ウイルスは細胞結合性が強く, 空胞変性, 多核巨細胞およびプラック形成を伴いながら増殖し, それには宿主細胞の分裂増殖期を使用するのが最適であった. 本ウイルスは核酸がRNA型で, エーテル・酸(pH 3.0)・熱(50℃, 30分)に感受性であり, 濾過試験・電顕観察の結果, 最小感染粒子径は100~130 nmであった. また, その密度はショ糖中で1.19g/mlを示した. 本ウイルスの2株は, その生物学的および物理化学的性状, さらにfeline syncytial virus (FSV) Coleman株との中和および寒天ゲル内沈降試験による交差血清試験の結果から, FSVと同定されたものである. 1968年より10年間の, 東京におけるネコの本ウイルス抗体保有率は平均3.8%と低かったが, 今後, ネコを用いる実験, ことにネコの細胞培養を使用する際には, 本ウイルスの混入の恐れもあることから, 十分注意を払うべきである.

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