日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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犬の胸椎に見られた軟骨肉腫の1例
千早 豊松川 清
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1980 年 42 巻 2 号 p. 243-249,252

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抄録

脊椎孔内に侵入増殖した腫瘍により脊髄の圧迫, 変形がみられ, 後躯麻痺を呈した10歳の雄シェパードの第11胸椎から第12胸椎左側に認められた軟骨肉腫について病理学的検索を行なった. 腫瘍組織は, 鶏卵大, 表面は軟骨膜で被われていた. 割面は, 灰青色, 透明感あり, 小葉構造を示した. 腫瘍組織は, 胸椎において, 椎体および椎弓に浸潤増殖し, さらに, 左側稚間孔より椎孔内ヘ侵入し, 髄膜および胸髄を右側ヘ三日月状に圧迫していた. 胸髄の神経細胞および神経線維の変性, 左側胸髄神経背および腹根の神経線維の変性, 硬膜および軟膜の肥厚が認められた. 腫瘍実質は, 淡明均質なる基質と, 大小の小腔内におさまった種々の形態を示す異形性軟骨細胞から構成されていた. 腫瘍細胞は, 円形もしくは楕円形の大型淡明核, クロマチンが濃染する二核, もしくは多核性巨大核などを有していた. 周囲筋組織に対しては, 圧排性に, 骨組織に対しては, 浸潤性, 融合性に増殖していた. 原発巣ほ, 第11胸椎肋椎関節部と思われた. 多発した変形性脊椎症が該部に異常な力学的負担を加える原因となり, それが腫瘍形成に関与したのかもしれない. 脊椎原発の軟骨肉腫についての文献的考察にもとづき, その報告例は, 極めで少なく, 興味ある1例と考えられた. 謝辞: 稿を終えるにあたり, 本論文の御校閲をいただいた岩手大学農学部 大島寛一教授に心から感謝の意を表します. 又, 検索の機会を与えて下さった酪農学園大学獣医学科 高橋清志助教授ならびに小谷忠生助教授に対し謝意を表します.

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