日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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42 巻, 2 号
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  • 松岡 由美子, 喜田 宏, 梁川 良
    1980 年 42 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    札幌市内の小鳥店で斃死した1羽のベニスズメの呼吸器から赤血球凝集性ウイルスを分離した. このウイルスは, 形態学的性状とノイラミニダーゼ活性および溶血活性を有することから, パラミクソウイルスであることが判明した. さらに赤血球凝集抑制(HI)試験の結果, 既知のパラミクソウイルスとは異なることが明らかとなった. 本ウイルスをベニスズメの鼻腔内に実験的に接種したところ, 接種後7日目までは多くの臓器からウイルスが回収され, ウイルス血症を起こしたものど考えられた. 接種後14および21日目には肺および下部腸管, または腎臓からのみ回収された. ウイルスを接種されたいずれのベニスズメも臨床症状を示さず, またその血中にはHI抗体が検出されなかった. 赤血球凝集活性は56℃の加熱に対して比較的安定であった. ノイラミニダーゼ活性の至適pHは6.0で, Turkey/Wisconsin/68と同じであった. このウイルスは, Paramyxovirus/finch/Hokkaido/2/78と命名された.
  • 岡本 敏一, 藤井 俊策
    1980 年 42 巻 2 号 p. 169-176
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    アヒルの幽門部における内分泌細胞を光学および電子顕微鏡で観察し, 次の所見を得た. 1) 幽門部は筋胃の十二指腸に連なる部位に幅約4mmの輪状帯として認められた. 2) 本部位には多数の内分泌細胞が認められ, これらのすべては好銀性を示した. 3) これらの内分泌細胞を電顕観察による顆粒の形状から, 次の5種に型別した. I型: 直径250~400nmの球型で, 内容の抜けたような, あるいは雲状や点状の芯を持つ顆粒と, 電子密度の高い内容の充実した顆粒を持つもの. II型: 径100~200nmの小型球型で有芯の顆粒を持つもの. III型: 短径200~300nmの小型多型性で有芯の顆粒を持つもの. IV型: 短径200~400nmと比較的大型で多形性の有芯顆粒を持つもの. V型: 径200~500nmの大型球型で, 明調帯のほとんどみられない顆粒を持つもの. 4) これら5型の細胞はすべて開放型であると判断した. 5) 型別の判別できた細胞1170個における各型細胞の出現頻度は, I型が最も高くその70%以上を占め, 次にIV型が約16%と高く, 他の型は低頻度であった. 6) これらアヒル幽門部のそれら, および哺乳類消化管のそれらとの形態的異同について論じた.
  • 福井 博泰, 新庄 エルサ-マルガリータ, 梁川 良
    1980 年 42 巻 2 号 p. 177-186
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    レプトスピラの抗原変異株を家畜から分離しようとして, Leptospira interrogans血清型canicolaを子犬に, pomonaをSPF豚に接種し, 血液および腎臓をhomologousな免疫血清を加えた寒天平板に培養した. 2~4週後に寒天上に発育したコロニーを, 大, 中および小型コロニーに区分し, それぞれいくつかずつを無作為に単離し, 沈降素吸収試験によるスクリーニングでその抗原性を親株と比較した. Canicolaの抗原変異株は感染犬10頭中7頭の血液および7頭中3頭の腎臓から得られた. 変異株は血液および腎臓由来の大型コロニーに多数, また血液由来の中および小型コロニーに少数認められた. 変異株は接種菌液からも分離されたが, 感染犬血液からはそれよりも有意に高い割合で分離された。他方pomonaの抗原変異株は感染豚5頭中2頭の血液のみにおいて小型コロニーに認められた. 大型コロニーは豚からは出現しなかった. 変異株は接種菌液からも分離されたが感染豚血液からはそれより有意に高い割合で分離された. 変異株の抗原性は交差凝集素吸収試験などによっても親株とは明らかに異なり, 同じ株由来の変異株はその抗原性が互いに類似した. 以上の結果は, 用いられた株には少数の抗原変異株が含まれており, その割合は実験感染後3~7日目の犬や豚の血液において有意に上昇したことを示している.
  • 二宮 博義
    1980 年 42 巻 2 号 p. 187-195
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    アクリル樹脂鋳型法を用いて, イヌの陰茎の血管構築を観察した. 観察の対象を, 主に勃起に併う海綿体系の構造上の変化とした. 鋳型標本は勃起状態と非勃起状態のものを作り, 両者を比較し, さらに各海綿体洞の細かい変化を走査型電子顕微鏡で観察した. 犬の陰茎では亀頭は大きく, 著しくよく発達していた. 逆に陰茎海綿体は発達が悪く, 陰茎が勃起状態で膨脹することはなかった. 勃起状態の亀頭の海綿体洞は, 3~4倍にその口径を増し, さらにその表面にはリング状に走る浅い溝が無数に認められた. これらは通常の組織検査でも認められる海綿体小柱の膠原線維束に相当するものと思われた. 一方, 陰茎海綿体の海綿体洞は, 勃起状態で多少膨脹するが亀頭の海綿体洞程ではなく, 勃起に併う構造上の著しい変化も認められなかった.
  • 林 俊春, 内海 文枝, 高橋 令治, 藤原 公策
    1980 年 42 巻 2 号 p. 197-210
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    臨床および病理学的に非滲出型の伝染性腹膜炎(FIP)と診断されたネコ7例について病理組織学的に検索した. 病理組織学的変化は滲出型と同じで, 主として腎, 肝, 腸間膜リンパ節, 肺, 脳, 眼に見られる血管炎および壊死をともなう肉芽腫性炎であった. 非惨出型自然例のうち1例の腎由来の材料を接種された12例の仔ネコには, 滲出型(10例), 非滲出型(2例)の両型が発現した. 自然例および伝達例の観察から, 壊死病変に先行して初期には大単核細胞におけるウイルス増殖が注目された.
  • 大永 博資, 石井 俊雄
    1980 年 42 巻 2 号 p. 211-219
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    培養ヒナ腹腔マクロファージによるEimeria tenellaのスポロゾイトならびにメロゾイトの取り込みに対してE. tenella免疫ヒナ血清の効果を試験した. 非動化免疫血清をマクロファージの培養液に20%の割合に添加した場合, マクロファージによる原虫の取り込みは原虫接種後30~120分で増加した. この効果は抗トリIgGウサギIgGのパパイン消化フラグメントの添加により抑制された. 一方, 観察期間中, 新鮮免疫血清で処理することによってマクロファージに取り込まれた原虫の数は増加しなかった. スポロゾイトのマクロファージに取り込まれた後における種々の血清処理の影響は新鮮免疫血清処理群においてのみみられた. この群のマクロファージ内原虫数は培養2時間後で, すでに非動化免疫血清, 非動化ならびに新鮮正常血清処理群と比較して極端に少なく, また2-15時間培養後のマクロファージ内原虫の減少率は他群に比ベ高かった. 非動化免疫血清処理群と正常血清処理群における原虫の減少率はほぼ同様であった. これらの現象には補体と抗体による細胞溶解作用が関与し, 結果として短時間で原虫は完全にあるいは部分的に溶解されたのであろうと考えられた.
  • 志賀 瓏郎, 小湊 昭, 篠崎 謙一
    1980 年 42 巻 2 号 p. 221-230
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    反芻動物におけるMg代謝と上皮小体ホルモン(PTH)の関係を明らかにするため, 4頭の成雌羊に対し, MgとCaの割合が異なる三種の人工飼料を順次切りかえ給与し, 血漿PTH濃度とMg, CaおよびPの代謝を調べた. 通常飼料から低Mg・低Ca飼料に切りかえると, 各動物とも血漿PTH濃度は低下した. 低Mg・低Ca状態でCaのみを補給すると, 1頭の老齢(8歳)羊は, 血漿PTH濃度が著しく低下し, 2日目にテニターを起こし, 4日目に起立不能および採食不能の状態になった. 5日目以降, 血漿PTH濃度は著明に上昇したが, 7日目に死亡した. 他の3頭の血漿PTH濃度は, 前半の4日間は低いレベルで上下し, 5日目以降, 食欲の減退とともに上昇し, 7日目以降食欲の回復に伴ない再び低下した. 低Mg状態下でMgを補給すると, 血清Mg濃度の上昇とともに血漿PTH濃度は著しく低下し, 同時に, 尿中MgとCa排泄量の増加と尿中P排泄量の減少が認められた. 以上の成績から, Mgの欠乏, または一過性過剰吸収は, Caの摂取量に関係なく, 血漿PTH濃度を低下させる. また, 飼料中のMgとCaの顕著なアンバランスは, 老齢羊でみられたように, 上皮小体機能を低下させ, 低Mg血症性テタニーを引き起す可能性があることが示唆された. 謝辞: 稿を終えるにあたり, ウシ上皮小体ホルモンの抗血清の御提供を賜った農林水産省家畜衛生試験場林 光昭氏, ならびに同北海道支場佐伯隆清氏に深謝する.
  • 志賀 瓏郎, 篠崎 謙一
    1980 年 42 巻 2 号 p. 231-241
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    反芻動物の低Mg血症の発症要因として, 泌乳の影響を調べるため, 泌乳羊(L)と非泌乳羊(NL)各2頭ずつに通常飼料(C期)および低Mg・低Ca飼料(E期)を与え, 両者のMg, Ca, Pの出納と血清濃度, 血漿上皮小体ホルモン(PTH)濃度を比較し, 以下の成績を得た. 1) Mg代謝: 実験期間を通じ, Lは, NLに比べ, Mgの吸収率が著明に低く, 尿中排泄率が高く, 一定の乳中分泌があり, 体内残留量は著明に少なく, 血清濃度も著明に低かった. 2) Ca代謝: 実験期間を通じ, Lは, NLに比ベ, Caの吸収率は高かったが, 内因性糞中Ca量が多く, 大量の乳中分泌があり, 体内残留量は著明に少なかった. 血清Ca濃度には, 顕著な差はなかった. 3) P代謝: Lは, 大量の乳中P分泌があり, NLに比べ, 体内残留量が著明に少なく, 血清濃度も低かった. 4) 血漿PTH濃度: LのPTHレベルは, C期には, NLのそれに比べ低い傾向を示し, E期には, 1日目に一過的に上昇した以外は, ほとんど変化しなかった. 一方, E期におけるNLのPTHレベルは, 2つのピークがみられ, 低Caに対する反応を示した. 以上の成績から, 泌乳動物は, 泌乳に伴うCa吸収率の上昇に対する抗高Ca血作用として, 血中PTH濃度の低下が示唆され, このことが, 泌乳動物のMgの利用性を低下させ, 乳中Mg分泌と相まって, 低Mg血症を誘発する可能性があると考えられた. また, Lでは, 低Mg血症により, 血中PTH濃度の上昇が抑制されると考えられた. 謝辞: 稿を終えるにあたり, 本研究の遂行に終始御協力をいただいた長岡彦光氏(現長野県庁), 小湊昭氏(現富山県庁)ほか岩手大学家畜生理学研究室各位, 上皮小体ホルモンの抗血清を御提供下さった農林水産省家畜衛生試験場 林 光昭氏, ならびに同北海道支場佐伯隆清氏に深謝する.
  • 千早 豊, 松川 清
    1980 年 42 巻 2 号 p. 243-249,252
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    脊椎孔内に侵入増殖した腫瘍により脊髄の圧迫, 変形がみられ, 後躯麻痺を呈した10歳の雄シェパードの第11胸椎から第12胸椎左側に認められた軟骨肉腫について病理学的検索を行なった. 腫瘍組織は, 鶏卵大, 表面は軟骨膜で被われていた. 割面は, 灰青色, 透明感あり, 小葉構造を示した. 腫瘍組織は, 胸椎において, 椎体および椎弓に浸潤増殖し, さらに, 左側稚間孔より椎孔内ヘ侵入し, 髄膜および胸髄を右側ヘ三日月状に圧迫していた. 胸髄の神経細胞および神経線維の変性, 左側胸髄神経背および腹根の神経線維の変性, 硬膜および軟膜の肥厚が認められた. 腫瘍実質は, 淡明均質なる基質と, 大小の小腔内におさまった種々の形態を示す異形性軟骨細胞から構成されていた. 腫瘍細胞は, 円形もしくは楕円形の大型淡明核, クロマチンが濃染する二核, もしくは多核性巨大核などを有していた. 周囲筋組織に対しては, 圧排性に, 骨組織に対しては, 浸潤性, 融合性に増殖していた. 原発巣ほ, 第11胸椎肋椎関節部と思われた. 多発した変形性脊椎症が該部に異常な力学的負担を加える原因となり, それが腫瘍形成に関与したのかもしれない. 脊椎原発の軟骨肉腫についての文献的考察にもとづき, その報告例は, 極めで少なく, 興味ある1例と考えられた. 謝辞: 稿を終えるにあたり, 本論文の御校閲をいただいた岩手大学農学部 大島寛一教授に心から感謝の意を表します. 又, 検索の機会を与えて下さった酪農学園大学獣医学科 高橋清志助教授ならびに小谷忠生助教授に対し謝意を表します.
  • 布谷 鉄夫, 宮本 英朗, 韓 行徳, 田島 正典
    1980 年 42 巻 2 号 p. 253-257
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    アカバネウイルスの培養細胞における増殖の特徴を増殖曲線, 螢光抗原およびCPEの消長を観察することによって調べた. 細胞相ウイルス価は約6時間の潜伏期の後直線的に上昇し, 液相ウイルス価も感染後30時間目まで並行して上昇した. 螢光抗原は細胞相ウイルス価の上昇に一致して細胞質内に出現した. CPEは細胞内抗原量が最高となる感染後30時間目から明らかとなり, ウイルスの増殖と密接に関連して出現した.
  • 妹尾 正登, 海佐 裕幸, 山根 博文, 福田 伸治, 千葉 玄三
    1980 年 42 巻 2 号 p. 259-261,263
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ランドレース種, 2歳, 体重230kgの雌豚の肝, 腸間膜リンパ節およぴ両側の腎に病巣が認められた. 腫瘍細胞は, 低分化型リンパ球性細胞より成り, 組織学的には特徴的な結節性増殖を呈し, 結節性低分化リンパ球型悪性リンパ腫と診断した. 肝, 腸間膜リンパ節腫瘍組織の濾胞類似構造を呈する部分において, いわゆるsmall cleaved cellが約25%程度と少数にも拘らず濾胞様構造が良く保持されており, 今後ブタ悪性リンパ腫の特性を検討して行く上で留意して置く必要があると考えられた.
  • 代田 欣二, 畔高 政行, 藤原 公策
    1980 年 42 巻 2 号 p. 265-270
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    気管支・細気管支上皮の壊死, 気管支上皮の増殖が特徴的な肺炎を呈した. 3力月齢の仔犬の舌・咽頭・喉頭・食道・気管・肺に, 好塩基性・Feulgen陽性の核内封入体と好酸性核内・細胞質内封入体を認めた. 前者には螢光抗体法で犬アデノウイルス(CAV)抗原を確認した. 感染上皮細胞中には電顕により, CAV粒子およびジステンパーウイルスのnucleocapsid様構造を認めた。
  • 高橋 公正, 片見 一衛, 中村 和博, 友田 勇, 藤原 公策
    1980 年 42 巻 2 号 p. 271-273,275
    発行日: 1980/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    家畜における骨髄腫はきわめてまれである. 本例は11歳雄秋田犬で生前, フィラリア寄生と突発的血尿がみられ, 血清学的には骨髄腫特有のmonoclonalな高γ-グロブリン血症を示し, IgG2ab成分が増加していた. 剖検では顕著な脾腫がみられ, 組織学的には脾をはじめとし各臓器に骨髄腫細胞の浸潤増殖像がみられた. 腫瘍細胞の増生はむしろ骨髄外性に著明で, 脾原発が推定された.
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