日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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犬の消化管内細菌叢に関する研究 : III. 下痢の臨床例と実験例における糞便内細菌叢
石川 尚明馬場 栄一郎松本 治康
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1982 年 44 巻 2 号 p. 343-347

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抄録
下痢を主徴とする犬の臨床例29頭についてその糞便内細菌叢を検査した. さらに硫酸マグネシウム溶液投与による実験的下痢犬8頭について同様の検査を試みた. それらの成績を過去における健康犬の成績と比較し, 次のような結果を得た. 1. 総菌数は下痢時において変化がみられなかった. 2. Lactobacillus の菌数は下痢時に著明な減少を示し, 検出されない個体も多くみられた. Bifidobacterium も下痢時に減少する傾向を示した. 3. Bacteroides および Enterobacteriaceae は下痢時に増加する傾向がみられ, それらの菌種が最優勢である個体が多かった. 4. Clostridium は下痢時にほとんど変化がみられず, Streptococcus の菌数の増減傾向は一定しなかった. 5. 臨床例における下痢時の菌叢の変化を総合的にみると, 硫酸マグネシウム投与による下痢時の菌叢とよく類似していた. 6. 臨床例および下剤投与例の継続的な菌叢の検査成績において, 下痢の終息と正常菌叢への復帰は時間的に一致せず, 菌叢の回復が遅れることが認められた.
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