日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
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44 巻, 2 号
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  • 高瀬 公三, 野中 富士男, 福田 輝俊, 山田 進二
    1982 年 44 巻 2 号 p. 207-211
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスの培養細胞馴化株(FK-78株)をSPF雛に接種し, 糞および主要臓器からのウイルス回収を試みた. ウイルスは糞, 盲腸内, 小腸内, 肝臓, 脾臓, 腎臓, 肺臓, 胸腺およびファブリキウス嚢から回収された. ウイルス量はファブリキウス嚢で最も多く, 盲腸内お上び糞がこれにつづいた. また各臓器におけるウイルス量は接種後4~5日目にピークに達した. 糞から回収されるウイルス量は, ウイルスの接種ルートにより異なり, 経口あるいは点鼻接種雛では比較的多量に回収され, 点眼接種雛では減少し, 筋肉内接種雛ではきわめて少なかった. ウイルスを2あるいは21日齢に経口接種した雛の糞からは, 接種後1~2日目より10日目まで回収されたが, 接種日齢が56あるいけ105日齢と高くなると, ウイルスの回収時期は遅れ, 接種後4~5日目から回収され始め, しかも回収期間も短くなる傾向にあった.
  • 正木 俊一郎, 清水 亀平次, 長 則夫, 広瀬 恒夫
    1982 年 44 巻 2 号 p. 213-221
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    北海道内の4と畜場においてと殺された豚524頭のリンパ節ならびに飼料, 敷わら等飼育環境材料からの抗酸菌分離を試みた. 異常に高率に菌が分離された十勝清水と畜場豚(顎下リンパ節49%, 腸間膜リンパ節20%)を除くと, 他の3と畜場豚における平均分離率は, 顎下リンパ節5.8%(17/294), 肺門リンパ節4.09%(12/293), 腸間膜リンパ節1.34%(4/298)であった. 同一個体で2力所のリンパ節から同時に菌が検出されたもの3例, 同一リンパ節から2種類の抗酸菌が分離されたもの3例が認められた. 個体別の抗酸菌分離率は深川で7%(7/100), 釧路で7.8%(8/102), 帯広では最も高く13.9%(14/101)であった. 分離された抗酸菌株は, すべていわゆる非定型抗酸菌で, そのうちの76%(58/76)は Runyon's Group III に属し, うち M. avium-M. intracellulare complex がその大部分を占めていた. 今回2株の M. avium 1 が帯広ならびに十勝清水と畜場豚から検出されたことは北海道における新知見である. また汚水, 糞便, 敷わらおよび土壌等の環境材料202検体から, 17株の抗酸菌が検出された. このうち6株は, 人お上び家畜から通常検出されるのと同じ血清型(4型1株, 6型2株, 8型3株)を示す M. intracellulare であった. このことは今後における豚抗酸菌感染症の予防対策上注目さるべきものと思われる.
  • 寺崎 邦生, 赤羽 啓栄, 波部 重久, 森山 信子
    1982 年 44 巻 2 号 p. 223-231
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    日本産肝蛭の分類学的位置は未だ明確にされていない. そこで肝蛭の分類を再検討するために, 22ヵ国34地方から集めた肝蛭の貯精嚢内の精子の状態を圧平標本, 切片標本, および摘出した貯精嚢の標本について観察し, 肝蛭を2型に分類した. 1つは貯精嚢内に多数の精子を認めるものであり, 他の1つはその中に精子を認めないか認めてもわずかしかないものである. 前者を精子形成正常型, 後者を精子形成異常型とした. ヨーロッパ, 南北アメリカ, オセアニア, およびアフリカからの Fasciola hepatica や F. gigantica はいずれも精子形成正常型であった. 一方アジアからの肝蛭は精子形成正常型のほかに精子形成異常型も認められ, 特に日本と韓国からの肝蛭はいずれもすべて精子形成異常型であった.
  • 吉村 治郎, 伊藤 治, 米沢 昭一
    1982 年 44 巻 2 号 p. 233-239
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ジヒドロストレプトマイシン, カナマイシンおよびフラジオマイシンを豚または牛に投与し, 殺処分後に採取した腎, 肝, 筋および尿中に含まれるこれら抗生物質の鑑別を試みた. まず, 蒸留水を用いて, 各検体の希釈乳剤を作成し, Micrococcus luteus ATCC 9341 と Bacillus subtilis ATCC 6633 に対する阻止径を, pH6.0 と 8.0 に調整した寒天培地を用いて測定した. この方法により, B. Subtilis に対し pH 8.0 の培地で最も大きな阻止径を示した腎と尿だけを, 薄層クロマトグラフィーによる鑑別に供した. すなわち, 組織乳剤および尿の限外濾液を作成し, 2枚のシリカゲルプレートの原点にスポットした. 1枚のプレートはクロロホルム-メタノール-l7%アンモニア(2:1:1, 展開液A)の上層で, 残り1枚のプレートは n-プロパノール-ピリジン-酢酸-水(15:10:3:12, 展開液B)で展開し, B. Subtilis を試験菌とする bioautography により Rf 値を求めた. いずれの抗生物質においても, それぞれの供試検体の Rf 値は, 常用標準品のそれよりもやや高くなる傾向があった. また, 展開液Aを用いた場合には, しばしばテーリングがみられた. しかし, 薄層クロマトグラフィーを2枚のシリカゲルプレートを用いて行えば, 屠畜の腎や尿に残留するアミノグリコシッド系抗生物質の鑑別も可能と思われた.
  • 大川 仁, 土井 邦雄, 藤田 哲雄, 岡庭 梓
    1982 年 44 巻 2 号 p. 241-245,248
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    大量のビタミンD2とコレステロールの混合物を短期間投与したラットにおける動脈系の病理学的変化を, 投与終了後3力月にわたり経時的に観察した. 処置後1力月以降になると, 壊死に陥り, 石灰および脂肪沈着のみられる大動脈の中膜には, さらにある種の多糖類の沈着が目立つようになった. 大動脈における増殖性の変化は, 処置後2ないし3力月になって目立つようになるが, それは, 多くの場合, 著しい石灰沈着によって硬化した弾性板が破綻した部位の内膜あるいは中膜に限局して観察された. 脂肪沈着あるいは泡沫細胞の出現は,このような増殖した内膜部位においても全く認められず, 本実験で用いた処置だけでは大動脈にいわゆる粥腫性病変が作出される可能性は少ないと判断された. 一方, 筋型動脈である冠状動脈および腸間膜動脈には, 処置後1ヵ月以降に内膜および中膜における平滑筋細胞の増生ならびに外膜もしくは血管周囲における線維増生による著しい壁の肥厚など内膜増生型の動脈硬化症と診断される変化が観察された.
  • 大島 寛一, 佐藤 繁, 岡田 幸助
    1982 年 44 巻 2 号 p. 249-257
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウシ白血病ウイルスに感染しているか, あるいは持続性リンパ球増多症を示し, かつ剖検において病巣がほとんど認められないか, またはきわめて軽微な13頭のウシについて病理学的検索を行った. 精細な肉眼検査により, 不特定複数のリンパ節の割面において, 類白色を帯び軽度に膨隆する領域が, 主として皮質に認められた. 組織学的には, この部に一致して著明なろ胞性増生と, 洞あるいは副皮質領域における非定型的幼若大型細胞の出現が認められ, 所見はその程度に従って3群に分けて記載された. パイエル板は腫大し, リンパ組織の増生が観察された. また第四胃粘膜に類白色願粒状膨隆部が散見され, 鏡下で固有層上層における異型性の強い細胞の集積巣として認められた. これらのことから, 病巣は最初リンパ節に発現することが強調され, そこにしばしば出現する大食細胞や好酸球の意義について, 若干の論議が加えられた.
  • 清水 一政, 黒須 幸雄, 神崎 淳二, 米谷 敦子, 中條 眞二郎, 浦川 紀元
    1982 年 44 巻 2 号 p. 259-266
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    栄養液中からKClを除いた液 (以下K除去液と略す) と強心配糖体の1つであるウワバインは腸管平滑筋を収縮させ, それらの収縮は同一機構によると言われている. 前報において各種動物の回腸標本を用いた実験で, ウワバインによる収縮の感受性には動物種差があると報告した. 本実験では, K除去液による収縮反応を各種動物 (サル, イヌ, ネコ, ウサギ, モルモット, ラット, マウス, ハタネズミ, シカ, ニワトリ, ハト, カエル, ガマ) の摘出回腸標本を用いて検討した. 収縮はマグヌス法により等張性に記録した. ネコとシカの回腸はK除去液により持続性に収縮し, 他の動物の回腸は収縮後弛緩した. 各種動物の回腸のK除去液による収縮は KCl (5.4mM) の添加によりただちに弛緩するが, ウワバイン (1×10-5M) の存在によりこの速い弛緩は抑制された. 各種動物の回腸標本のK除去液による収縮の感受性は 40mM KCl の収縮を100%とした時の相対的な収縮率(%)で表わされ, ハト(96.0%), カエル(93.0%), ハタネズミ(89.0%), イヌ(77.8%) およびネコ(64.5%) の回腸は感受性が高く, シカ(53.0%), サル(48.9%), ニワトリ(42.9), モルモット(39.0%), ラット(35.0%) およびウサギ(27.4%) の回腸がこれに続いて高く, マウス(22.4%) とガマ(17.0%) の回腸の感受性は低かった. また各種動物の回腸のアセチルコリン収縮には感受性の差を認めなかった. 以上の成績から, K除去液は各種動物の回腸を収縮させ, その収縮率はウワバインによる収縮の感受性の動物差と似た結果を示した. これらの成績は, K除去液とウワバインが electrogenic Na pump (Na, K-ATPase) の抑制を介する脱分極により収縮を発生するという考えを支持するものと思われる.
  • 原田 孝則, 山城 茂人, MEADE P.D., BASRUR P.K., 真板 敬三, 白須 泰彦
    1982 年 44 巻 2 号 p. 267-274
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ビタミンA欠乏飼料で7力月間飼育したハムスター全例(7例)に胃潰瘍の発生を認めたので, その発生機序について病理学的に検討した. これらのハムスターの胃は, 食物停滞のため拡張し, 内容物中に被毛が種々の程度に混在していた. 潰瘍性病変は, 全て腺胃部に限局し, 特に前腺胃移行部に好発した. 組織学的には, 粘膜の限局性壊死・びらんにとどまるものから大型の穿孔性潰瘍に至るものまで種々の過程の潰瘍性病変が認められた. これらの潰瘍は, ビタミンA欠乏による胃の機能障害に起因する食物停滞および粘膜上皮の壊死性変化の共力作用の結果生じたものと推察した. なお, 胃内容物中の毛の存在も潰瘍発生における物理的要因として無視できなかったため, ハムスターに1%の割合で被毛を混餌投与する追加実験を行ったが, 被毛摂取による胃の食物停滞および腺胃部粘膜の組織学的変化は観察されなかった.
  • 関崎 勉, 伊沢 久夫, 小沼 操, 見上 彪
    1982 年 44 巻 2 号 p. 275-282
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ニューカッスル病ウイルス (NDV) の変異株であるタカウイルスは, 室温での赤血球凝集 (HA) 反応が不安定である. ニワトリ胚腺維芽細胞に形成させたプラックにより, 本ウイルスをクローン化することによって, 4℃でのみ一定した HA 反応を起こすウイルス (L+R-) と, 4℃および室温の両温度で HA 反応を起こすウイルス (L+R+) とが得られた. これらウイルスは, 構成蛋白においても, 血清学的性状においても互いに類似しており, 2株の NDV との間にも差異を認めなかった. 一方, タカウイルス (L+R-, L+R+ および親株) の溶血能は, NDV 佐藤株と同程度であったが, NDV-B 1株に比べ低かった. 室温におけるニワトり赤血球からのウイルス遊出は, L+R+ や2株の NDV に比べてL+R-が最も早く, またその遊出量もL+R+が最も多かった. ウイルスを遊出した後の赤血球に, 新たにウイルスを加えても, HA 反応は起こらなかった.
  • 西村 昌数, 朴 駿〓, 中川 治人, 浦川 紀元
    1982 年 44 巻 2 号 p. 283-288
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ニワトリの腺胃における胃酸分泌に対する迷走神経刺激およびカルバコール (CCh, 5μg/kg, i.v.) の促進作用におよぼすアトロピン (ATR,0.5mg/kg, i.v.), プログルミド (PGM, 100mg/kg, i.v.) およびメチアミド (MTM, 0.4mg/kg,i.v.) の影響を検討した. ニワトリ (ラミート種, 雄, 3.5~4.8kg) にウレタン麻酔, 人工呼吸, 両側迷走神経切除, 生理食塩水の補液および保温を施し, その腺胃に急性フィステルを装着し, 胃内灌流液の pH を連続記録した. 食道腺胃移行部で迷走神経を電気刺激 (50Hz, 0.1msec, 30volt, 40~60sec) した. 迷走神経刺激および CCh の適用は, 一過性 (transient phase; TP) およびこれに続く持続性 (lasting phase; LPの2相から成る低 pH 下反応をもたらした. TP反応はATRにより抑制されたが, PGM および MTM によっては影響されなかった. LP 反応は ATR, PGM および MTM のいずれによっても抑制された. PGM および MTM は, それぞれテトラガストリン (5μg/kg, i.v.) およびヒスタミン (10μg/kg, i.v.) による pH 低下反応を抑制した. 以上の成績から, ニワトリにおけるコリン作働性の胃酸分泌促進には, プログルミドおよびメチアミド感受性の過程が部分的に含まれることが考えられ, このことは, コリン作働性の胃酸分泌促進に内因性のガストリンおよびヒスタミンが関与する可能性を示唆している.
  • 上田 八尋, 本間 遜, 阿部 千代治
    1982 年 44 巻 2 号 p. 289-295,300
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    緑膿菌感染による馬の角膜潰瘍を予防する目的でOEP, プロテアーゼトキソイド, エラスターゼトキソイドからなる Multi-component vaccine を馬に応用した. ワクチン接種をした馬は極めて良好な抗体を産生し, 抗体が十分に産生されたところで感染防御試験を行った. ワクチン接種馬2頭と非ワクチン接種馬2頭の角膜に傷をつけ,そこにプロテアーゼとエラスターゼを産生する緑膿菌IFO 3455株の5.2×107/mlを滴下し, 感染によって起る角膜障害を無加療のまま6日間にわたって観察した. ワクチン接種をした1頭は軽い糜爛を呈しただけで間もなく治癒した. 他の1頭は軽度の潰瘍を発症したが, その潰瘍は上皮部分にとどまり, 周囲からも限局したままで悪化することもなく, 観察期間の終期には良化傾向が観察された. これに対して, 対照とした非ワクチン接種馬2頭は, いずれも重度の角膜潰瘍と膿瘍を発症して失明した. このことから Multi-component vaccine は緑膿菌感染による馬の角膜潰瘍にも有効であることが判明した. また, 対照とした非ワクチン接種馬から, 緑膿菌感染による角膜潰瘍と膿瘍の進行過程を詳細に捕えることができた. すなわち, 角膜外傷部は感染によって糜爛し, 次いで小潰瘍に移行する. その潰瘍の外周には上皮剥離部が形成され, その翌日にはこの上皮の剥離した部分に潰瘍が形成される. 再び, その外周に上皮剥離部が形成され, 膿瘍がこれを追いかけるように拡大していった. このような進行過程の詳細は野外例における病勢, あるいは予後判定に有意義であろう.
  • 上田 八尋, 佐内 豊, 本間 遜
    1982 年 44 巻 2 号 p. 301-308
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    馬の緑膿菌感染による角膜潰瘍を治療する目的で, 免疫グロブリンを角膜内に注射しその効果を薬物のみで治療した症例と比較した. 免疫グロブリンは OEP ワクチン, プロテアーゼトキソイド, エラスターゼトキソイド, およびエキソトキシントキソイドによって馬を免疫して得た. この免疫グロブリンは, OEP-PHA 価が4,094倍, プロテアーゼー, エラスターゼ-PHA 価がそれぞれ512倍, およびエキソトキシン- PHA 価が360倍と, 極めて高い抗体価を有していた. 傷をつけた角膜に緑膿菌を接種し, 24時間後に角膜潰瘍の発症を確認したうえで, 1症例には抗生物質を主体とした薬物療法のみで加療しだが, 効果は得られなかった. 同様に角膜潰瘍を形成した2症例には, 免疫グロブリンの角膜内注射と抗生物質の併用療法を行ったところ, 極めて良好な結果が得られた. これらのことから, 潰瘍を形成してしまった症例の薬物治療は極めて困難であるが, 高い抗体価を有する免疫グロブリンの角膜内注射と抗生物質の併用で相乗効果が得られ, 治癒させることができた. 角膜潰瘍を形成してから始めた治療は, 臨床例により近い条件であり, その治療効果が良好であることは野外例にも十分応用できるものと思われる.
  • 辨野 義己, 光岡 知足, 白坂 昭治
    1982 年 44 巻 2 号 p. 309-315
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    2力所のと畜場に搬入された69頭の豚に71例の膿瘍が認められ, 細菌学的検索の結果, 偏性嫌気性菌141菌株, 通性嫌気性菌130菌株が分離され, 全膿瘍の73%から偏性嫌気性菌が検出された. そのうち, 15例(21.1%)の膿瘍からは, 1菌種のみが検出され, 残りの膿瘍からは, 偏性嫌気性菌, 通性嫌気性菌が混合して検出された. 141菌株の偏性嫌気性菌のうち, Bacteroides は最も多く分離された菌属で, 全膿瘍の61.9%に検出され, 次いで Fusobacterrium, Peptococcus, Propionbacterium, Eubacterium 分離された. なお, Lactobacillus, Megasphaera, Clostridium, Bifidobacterium, Veillonella の検出例はきわめて少なかった. 分離された菌種(species)としては, B. ruminicola/oralis group が最も多く, 全膿瘍の57.7%に相当する41例の膿瘍から検出されたが, この場合同菌種単独での検出例は少なく, ほとんどが Corynebacterium piogenes あるいは C. pseudopyogenes と共存した状態で検出された.
  • 喜田 宏, 本多 英一, 梁川 良, 松浦 善治, 河岡 義裕, 高井 伸二, 磯貝 恵美子, 太田 千佳子
    1982 年 44 巻 2 号 p. 317-321,323
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1979年秋に32種719羽の小鳥, 19種255羽の水禽および6種126羽の海鳥をウイルス学的に検索した. 207羽のアオジ(Emberiza spodocephala)のクロアカぬぐい液から6株のパラミクソウイルスが分離され, それらは M 蛋白の抗原性にもとついて Yucaipa 種に属することがわかったが, 二重免疫拡散法でしらべた HN 蛋白の抗原性状では規準種の Chicken/California/Yucaipa/56 とは完全に同じではなかった. また, 21羽のコガモから3株, 90羽のヒドリガモから2株のパラミクソウイルスが, それぞれクロアカぬぐい液から分離された. このうち4株は抗原的に Duck/Mississippi/75と同一であり, 他の1株はニューカッスル病ウイルスと同定ざれた.
  • 勝部 泰次, 田中 饒
    1982 年 44 巻 2 号 p. 325-333
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    人に胃腸炎を発症させるに要する菌量を知るための基礎研究として, 絶食などの前処置を受けていない, 外見上健康なカニクイザルに, S. typhimurium の野生株(線毛株の胃内投与により敗血症死したマウスの腸管乳剤)および非線毛株(非線毛株の培養菌)を胃内投与した. 野生株を投与した例では, 107個群3頭中3頭, 105個群6頭中5頭, 103個群6頭中6頭に腸管感染の成立をみた. 感染例のうち, 107個群では全例, 105個群では4頭, 103個群では2頭が腸炎を発症した. これに対し, 非線毛菌投与例では, わずかに107個群3頭中1頭, 105個群3頭中1頭に腸管感染の成立と腸炎の発症をみたのみであった. 主要な症状は水様性下痢であったが, 個体によっては粘血便, あるいは軟便を排泄するものもみられた. 水様便は2~3週間, 粘血便は2または5日, 軟便は1または2日, それぞれ排泄された. 病初の大便中の菌量は103~108/gであり, 多くの例において, 経過中に排泄菌量が増加した. 粘血便を排泄した2頭を剖検したところ, 病変は回腸, 結腸などにみられた. 野生株と非線毛株の間にみられた感染性の差異は, 線毛が関与している腸管定着能の有無によるものと考えられた. 人のサルモネラ胃腸炎は, 分離株を用いた人体実験で証明されたものよりもはるかに少い菌量でおきているものと推定される.
  • 鈴木 實, 豊澤 敬一郎, 七條 喜一郎
    1982 年 44 巻 2 号 p. 335-341
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    マウス, ラットおよびウサギの赤血球浸透圧抵抗性(血球抵抗性)をCPC法で測定し, 測定値に影響を及ぼす種々な条件について検討した. CPC法に用いる Coilの食塩水濃度は, マウスおよびラットの血液には30~150 mOsm, ウサギの血液には30~200 mOsmの濃度が適していた. 採血に使用する抗凝固剤(ヘパリン, 二重蓚酸塩, EDTA-2Na)により, 血球抵抗性に差がみられた. またマウスの血液採取部位によっても差がみられ, 最小抵抗値(HSP)および極大溶血値(HMP)は末梢血が心臓血よりも高い値を示した. ラットおよびウサギの血液を室温(29~32℃)に6時間, 4℃に24時間保存した場合, HSP, HMPおよび最大抵抗値(HEP)の増加はみられなかった. しかし, マウスの血液では室温保存3時間目以降にHSP, HMPおよびHEPの著明な増加がみられ, 4℃保存においても24時間目にHSPの増加がみられた. マウスの1週齢と6週齢の血球抵抗値には差がみられなかったが, 4週齢のHSPは1週齢および6週齢よりも低い値であった. 雄ラットの血球抵抗値は週齢による差を示さなかった. しかし, 雌ラットのHEPは成長に伴って減少した. ウサギの血球抵抗値は3力月齢と5力月齢には差がみられなかったが, 2力月齢のHEPは3力月齢および5力月齢よりも高い値であった.
  • 石川 尚明, 馬場 栄一郎, 松本 治康
    1982 年 44 巻 2 号 p. 343-347
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    下痢を主徴とする犬の臨床例29頭についてその糞便内細菌叢を検査した. さらに硫酸マグネシウム溶液投与による実験的下痢犬8頭について同様の検査を試みた. それらの成績を過去における健康犬の成績と比較し, 次のような結果を得た. 1. 総菌数は下痢時において変化がみられなかった. 2. Lactobacillus の菌数は下痢時に著明な減少を示し, 検出されない個体も多くみられた. Bifidobacterium も下痢時に減少する傾向を示した. 3. Bacteroides および Enterobacteriaceae は下痢時に増加する傾向がみられ, それらの菌種が最優勢である個体が多かった. 4. Clostridium は下痢時にほとんど変化がみられず, Streptococcus の菌数の増減傾向は一定しなかった. 5. 臨床例における下痢時の菌叢の変化を総合的にみると, 硫酸マグネシウム投与による下痢時の菌叢とよく類似していた. 6. 臨床例および下剤投与例の継続的な菌叢の検査成績において, 下痢の終息と正常菌叢への復帰は時間的に一致せず, 菌叢の回復が遅れることが認められた.
  • A. P. Singh, J. M. Nigam
    1982 年 44 巻 2 号 p. 349-353
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    10頭の健康な雄の水牛の子牛に対し右横腹から総胆管を結紮した. これらの子牛から約20mlの血液を手術前, 手術後1日, 2日, 3日その後3~4日おきに採りGOT, CPT, アルカリフォスファターゼ, 直接・間接ビリルビン, 総コレステロール, 総蛋白, 血糖値を測定した. GOT, GPTはそれぞれ74.50±14.96, 17.33±1.33単位であったものが, 7日目には335.50±22, 70および31.16±2.61までに上昇し, その後少しずつ低下した. アルカリフォスファスターゼは2.50±0.36単位であったものが7日目には11.02±1.82に上昇した. ビリルビン値は間接型に対し直接型の方が上昇は大きかった. コレステロール値は正常値82.50±3.83mg/100mlに対し術後3日で320.83±7.59mg/100mlを示し, その後わずかに低下した. 血糖値は術後7日にして68.66±2.20mg/100mlと最大値を示した.
  • 高村 恵三, 安食 政幸, 平松 計久, 武光 哲, 中井 正久, 佐々木 文存
    1982 年 44 巻 2 号 p. 355-357
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1980年3月, 軽い呼吸器症状を呈した仔犬の鼻腔と咽喉頭の swab より, 初代犬腎培養細胞に円形化のCPEを示すウイルスを分離した. この分離ウイルスはその物理化学的および血清学的性状により, イヌアデノウイルス2型であると思われる.
  • 清水 幹夫, 国則 健二, 阪野 哲也, 寺島 豊明
    1982 年 44 巻 2 号 p. 359-363
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    豚由来の H. Pleuropneumoniae 24株および P. multocida 45株の薬剤感受性を調べた. 最も高い活性を示した薬剤 (MIC:0.2~0.8μg/ml) は前者に対して CBD (嫌気条件), TMP, TRP, APC, CER, CP, OTC, CL, RFP および FZ であり, 後者に対しては CBD (嫌気条件), PCG, APC, MCI-PC, CER, CP および DTC であった. 供試菌株のうち, 薬剤感受性分布に明確な2峰性を示すものは認められなかった.
  • 西田 恂子
    1982 年 44 巻 2 号 p. 365-368
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    鶏ミオグロビンの研究過程において, その異性体の1つと同じ電荷をもつ低分子量蛋白質が骨格筋に特異的に存在することが免疫反応によって観察された. その分子量推定値 (約13,200), 酸性分子であること, 特異的な吸収スペクトル, 筋組織内での局在性などから, この蛋白質はパルプアルブミンと考えられる. この分子は供試された他の5種の家禽骨格筋にも存在し, すべて共通する抗原性をもち, 鶉のみ他より強い酸性を示した.
  • 佐藤 元, 吉野 峰生, 宮坂 祥夫, 瀬田 季茂, 上原 伸美, 望月 公子
    1982 年 44 巻 2 号 p. 369-373
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    エネルギー分散型X線マイクロアナライザー (EDX) を用いて馬の被毛 (両側肩甲骨間の部位) 中に含まれる各種の元素の含有量について基礎的な検討を行ったところ, un-ashed 群の分析では全ての試料から硫黄と塩素を示すX線ピークが明瞭に検出され, 一方, ashed 群の分析では硫黄と共にカルシウム, カリウム, マグネシウムのX線ピークが顕在化してきた. これらの元素量ほ種々な生体内の要因に関連して変動することが示唆された.
  • 金子 賢一, 橋本 信夫
    1982 年 44 巻 2 号 p. 375-377
    発行日: 1982/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    アセトン処理法によって正常凝集素を除去したドブネズミ血清114例について yersinia pseudotuberculosis IB菌および IVA 菌に対するO凝集素価を測定し, 流行地に生息するドブネズミにおける本菌の侵淫状況に血清疫学的考察を加えた.
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