抄録
分類学的に近縁なラット, マウスおよびウサギの鋤鼻器官の形態学的詳細を光顕及び電顕により検索し, その結果をすでに報告したハムスターのものと比較して考察を加えた. 本器官はこれらの動物種ではいずれも吻側の小孔により鼻腔と交通し, 周囲をラット, マウスでは硬骨, ウサギでは軟骨によって囲まれていた. 感覚上皮の感覚細胞, 支持細胞の自由縁は共に微絨毛に覆われ, 線毛などの表面構造物は観察されず, 感覚細胞の微絨毛がにおい分子の受容部位であると推定された. 呼吸上皮には感覚受容細胞は観察されず, 鼻腔の呼吸上皮と同様の形態を示すので, 機能的にも鼻腔のものと同様であろう. 静脈洞はこれらの種でよく発達し, 静脈洞壁の平滑筋層, 呼吸上皮下の弾性線維および呼吸上皮細胞間の強固な結合などから, いわゆるpumping mechanismの存在が示唆された. ヤコブソン腺は主に粘液腺より構成され, 鼻腔内に分布する鼻腺と同様の機能をもつものと推測された.