抄録
1976年から1980年にかけて分離された大腸菌930株(牛由来株307株, 豚由来株414株および鶏由来株209株)を用いてCarbadox(Cdx)耐性形質を有するR plasmidの分布状況について検討した. Cdx耐性株は, 牛由来株および鶏由来株では検出されなかった. これらの菌株は, 嫌気性下でCdx 3.13μg/mlに対して感受性を示した. 一方豚由来株では, 414株中30株(7.2%)にCdx耐性株が認められた. これらはすべてCdxが豚赤痢の予防又は成長促進に使用されていた農場から分離されたものであった. またこれら耐性株中1980年に1農場に由来した21株(70%)から, Cdx耐性形質を有するR plasmidが検出された. これらCdx耐性形質は, 混合培養によりE. Coli K-12株ヘ常にStreptomycin, SpectinomycinおよびAmpicillin耐性を伴なって伝達可能であった. つぎにすでに報告した豚由来大腸菌から検出されたCdx耐性形質を有するpNV13を用いてその宿主域について検討したところpNV13は, Klebsiella pneumoniae, Citrobacter freundii, Salmonella typhi, Salmonella typhimurium および Shigella flexneri 3aに対して接合伝達が可能であったが, Treponema hyodysenteriae では認められなかった. これらpNV13を保有するtransconjugantの嫌気性下のCdx耐性値は, 最小発育阻止濃度で6.25~12.5μg/mlであった.