薬剤の筋肉内投与後の投与部位筋肉における吸収終了時間について, 血漿中薬物濃度の変化を薬物速度論の解析によって推定する方法を検討した. 動物はゲッチンゲンミニブタ10頭, 薬物はスルファモノメトキシン(SMM, 10mg/kg)の水溶液を用いた. SMM静注および筋注後の血漿中薬物濃度を薬物速度論によって解析した結果, 筋注後の吸収は完全であった. またLoo-Riegelman解析によると, 吸収過程は一次速度で, 吸収速度定数(ka)は2.87±2.14(hr
-1) (n=8)と計算された. したがって平均投与部位残留率は1-(1-e
-2.87t)として表わされた. 消失相における非投与部位筋肉と血漿中の薬物濃度比は0.428±0.0331(hr
-1)(n=6)であった. また薬物投与後のある時点における投与部位での最大局所残留濃度は, 局所残留薬物量を考えられる最小の注射部位薬液分布容積である, 1ml/gで割ることによって得られる. kaの平均値の95%信頼限界下限値(0.961)を使用すると, 注射部位濃度が非注射部位筋肉濃度と等しくなる時間, つまり吸収終了時間は投薬約13時間後と算出された. 同時に行なったSMM筋注後の逐次屠殺による筋肉残留量を実測した結果, 吸収終了は投薬後5~7時間の間であった. 以上から筋注後の投与部位筋肉の薬物吸収終了時間は, 薬物速度論による解析によって, 安全に, 一定の規準をもって推定できると考えられた.
抄録全体を表示