抄録
牛の脂肪壊死症の野外発生例30頭を10頭ずつの3群に分けて治療試験を試みた。第1群にはハトムギ (ヨクイニン) を300g, 第2群には大豆由来のビタミンE含有物 (S) を150g, 第3群にはハトムギ 150g と S150g 混合物を毎日約4ヵ月間投与して臨床所見および直腸検査による腹腔内脂肪壊死塊の状態を観察した。さらに各群の半数例はアルギニンを負荷することにより, 治療期間の短縮を試みた。その結果, ハトムギあるいはS投与により壊死塊消失率17%, 壊死塊縮小率67%が確認された。アルギン負荷による膵グルカゴン, インスリンや脂質成分の応答を調べると, 健康牛では一定の応答パターンを示したのに対して病牛はグルカゴンの応答分泌量が低いことがわかり, 治療後グルカゴンはほぼ正常値に回復したのに対して, 遊離脂肪酸は治療後も異常パターンを示した。以上から本症における膵内分泌機能異常が示唆された。