日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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ウェステルマン肺吸虫 Paragonimus westermani (Kerbert, 1878) のパラテニックホスト (待機宿主) に関する実験的研究 : サルについての検索成績
杉山 広園田 二朗奥田 稔冨村 保
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1984 年 46 巻 3 号 p. 345-356

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抄録
ウェステルマン肺吸虫 (両性生殖型) に対する感受性, 体内における虫体発育状況, 寄生部位, および本虫感染にもとつくサルの病態を調べ, カニクイザル, ニホンザルおよびタイワンザルがウェステルマン肺吸虫 (両性生殖型) のパラテニックホスト (待機宿主) になることを明らかにした。カニクイザル3頭, ニホンザル1頭, タイワンザル1頭に本虫のメタセルカリアをそれぞれ120個投与し, 70~400日目に剖検した。全例とも臨床症状, 肺吸虫卵排出は認められなかったが, 持続性の著明な好酸球増多症が観察された。虫体の回収率は35.0~51.7% (平均44・2%) で, サルの種類に関係なく, 回収虫体の大多数 (平均93.6%) は, ほとんど未発育の状態で筋肉, とくに躯幹および四肢から検出された。胸腔, 腹腔, 横隔膜, 肝臓, 心筋, 皮膚・皮下組織などからも, 少数ながら幼若虫が回収されたが, 肺には虫嚢形成が認められず, 虫体も証明できなかった。これらの幼若虫を終宿主であるネコに経口投与すると, 虫体の回収率は60~90%で, 肺に虫嚢の形成を認め, 投与後41~66日に糞便内拶排卵が開始した。
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© 社団法人 日本獣医学会
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