1986 年 48 巻 2 号 p. 219-226
自然発生性神経根神経症を伴った104から135週齢ラットの坐骨神経を光学的および電子顕微鏡的に検索した。最も顕著な変化は, ワーラー変性を示唆する神経線維変性と軸索再生であった。ここらの変化とともに, 軸索の口径に比し不均衡な厚さの髄鞘を伴う萎縮性の軸索が大型の有髄神経線維に時々観察された。これらの有髄線維においては, 本神経症の脊髄神経根において最も顕著な変化である軸索の萎縮を伴う髄鞘の著しい拡張を特徴とする脱髄性変化も認められた。これらの脱髄性変化を示す神経線維の中では, 軸索の萎縮に続く軸索の変性を示す神経線維が散見された。以上の所見から, 神経根神経症を伴う老齢ラットの末梢神経遠位部における軸索変性およびそれに続く神経線維の崩壊は, 近位部での軸索萎縮に起因する変化であることが示唆された。