日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
Print ISSN : 0021-5295
ISSN-L : 0021-5295
48 巻, 2 号
選択された号の論文の34件中1~34を表示しています
  • 前田 尚之, 菅野 茂, 土井 邦雄, 桑原 正貴, 山本 龍生, 光岡 知足
    1986 年 48 巻 2 号 p. 197-203
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    4, 8および35週齢のDBA/2とBALB/cマウスについて, 心臓の病変および心電図学的検索を行った。心電図所見として, QRS 持続時間とPQ間隔の延長, 異常P波やQRS群におけるノッチの出現, ST部分の偏位および平均電気軸の左方偏位が認められた。病変としては, 散在性の小巣状の心筋石灰沈着と右心室,心外膜下心筋層に限局した高度の石灰沈着がとくにDBA/2マウスにおいて認められた。これら心電図学的および病理学的変化はともに8週齢で明らかとなり, また, BALB/cマウスに比べDBA/2マウスで顕著であった。このような心臓障害は, 血清カルシウム値に変動がみられないことから, 高カルシウム血症に起因するものではないと考えられた。
  • 金子 誠二, 丸山 務
    1986 年 48 巻 2 号 p. 205-210
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1972~1984年までの間にヒト, ブタ, イヌ, ネコ, ドブネズミおよび豚肉から分離されたY. enterocolitica 血清型O3株, 合計207株を用いて約44Mdプラスミドの検出, カルシウム依存性および自己凝集性の有無を調べた。プラスミド保有株, カルシウム依存性株おとび自己凝集性陽性株はそれぞれ164株(79.2%), 152株(73.4%)および149株(72.0%)であった。プラスミド保有株はカルシウム依存性あるいは自己凝集性陽性であった。プラスミド非保有株のうち4株(1.9%)が自己凝集性陽性を示し, 残りはすべてカルシウム非依存性で自己凝集性も陰性であった。Y. enterocolitica は由来が異なるにもかかわらず, 44Mdの単一のプラスミドを保有していた。これらのプラスミドの制限酵素切断パターンは等しく, BamHI, EcoRI および HindIIIでのフラグメント数はそれぞれ9, 10および13であった。これらのことより, Y. enterocolitica血清型O3の保有する約44Mdのプラスミドは, 由来が異なってもカルシウム依存性や自己凝集性と密接な関係にあり, このプラスミドが血清型O3に固有であることが示唆された。
  • 中山 裕之, 二井 愛介, 荻原 定彦, 井上 智, 岡田 信彦, 藤原 公策
    1986 年 48 巻 2 号 p. 211-217
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    摘脾, カラギーナン, シリカ, 墨粒処置などで網内系機能を抑制することにより, マウス Tyzzer病は増幅された。摘脾の効果は接種7日前より3日前が大きく, カラギーナンなどの処置は接種翌日処置にのみ効果がみられた。無処置の無胸腺ヌードマウスでは感染増強はみられなかった。しかし, 接種6日前に摘脾, さらに接種翌日にカラギーナン処置したヌードマウスでは感染増強がみられた。
  • 三森 国敏, 真板 敬三, 中島 信明, 白須 泰彦
    1986 年 48 巻 2 号 p. 219-226
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    自然発生性神経根神経症を伴った104から135週齢ラットの坐骨神経を光学的および電子顕微鏡的に検索した。最も顕著な変化は, ワーラー変性を示唆する神経線維変性と軸索再生であった。ここらの変化とともに, 軸索の口径に比し不均衡な厚さの髄鞘を伴う萎縮性の軸索が大型の有髄神経線維に時々観察された。これらの有髄線維においては, 本神経症の脊髄神経根において最も顕著な変化である軸索の萎縮を伴う髄鞘の著しい拡張を特徴とする脱髄性変化も認められた。これらの脱髄性変化を示す神経線維の中では, 軸索の萎縮に続く軸索の変性を示す神経線維が散見された。以上の所見から, 神経根神経症を伴う老齢ラットの末梢神経遠位部における軸索変性およびそれに続く神経線維の崩壊は, 近位部での軸索萎縮に起因する変化であることが示唆された。
  • 二井 愛介, 中山 裕之, 藤原 公策
    1986 年 48 巻 2 号 p. 227-235
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ICRマウスにMSK株接種直後に肝2/3部分切除を行なうことにり, Tyzzer病は増悪された。接種前3日の肝切除では, この効果はみられなかった。また肝2/3切除群では, 1/3切除群よりも肝病変は重度であった。これらの成績から, 肝切除後の肝細胞代謝活性の変化が, 菌増殖を促進することが示唆された。
  • 村上 敏明, 平野 紀夫, 井上 玲, 千歳 健一, 土屋 耕太郎, 小野 勝彦, 内藤 善久, 柳原 敬
    1986 年 48 巻 2 号 p. 237-245
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    牛ロタウイルス(BRV)および牛コロナウイルス(BCV)で免疫した牛の血清およびプール初乳々清から得たrグロブリン分画を植物油等と乳化し, 人工初乳(AC)を作成した。本試験では初乳未摂取の子牛へのBRVおよびBCVの実験的感染に対するACの防御能をしらべた。子牛 No.1および No.2へはBRVおよびBCVを, No.3, 4, 5へはBCVを, 何れも大腸菌K99(+) Ent(+)と混合して経口攻撃した。ACを全く与えないNo.1およびNo.3は攻撃後下痢を発した。しかし攻撃前後に数回ACを投与した子牛No.2, および攻撃後30分以内に1回ACを投与した子牛No.5は全く下痢を示さなかった。攻撃4時間後に1回ACを投与した子牛No.4は一過性の下痢を示した。下痢の程度および下痢の阻止は, 投与ACに由来した, 100時間令前後の子牛血中の免疫グロブリン濃度およびウイルス抗体価と大よそ対応していた。
  • 相内 聖峰, 小林 賢一, 内海 文枝, 佐久間 貞重
    1986 年 48 巻 2 号 p. 247-257
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    N-メチルニトロソウレア(MNU)により誘発した奇形性水頭症ラットの上衣を1, 3, 12および27週齢において形態学的に検索した。水小頭症は週齢の進展とともに顕著となった。側脳室の軽度な拡張は1週齢において観察され, 27週齢で上衣細胞の剥離および圧縮が最も強かった。3週齢の上衣細胞および上衣下組織の変化は電顕的には比較的軽度であった。12週齢では変性上衣細胞に核内クロマチンの不規則な分布, 小胞体とゴルザ嚢の拡張により形成された種々の大きさの空砲が認められた。大部分のコトコンドリアは濃縮し, 微細線維は減少または崩壊していた。脈絡叢上皮の近傍の上衣細胞には, 短管状を呈する変形した粗面小胆体が多くみられた。細胞表層では繊毛および微絨毛が強く崩壊し, 上衣細胞間腔も明瞭に拡張し, 上衣下には星状膠細胞突起, 神経突起および細胞外腔の拡張によって形成された種々の大きさの空砲が形成された。これらの上衣細胞機能の不全を示唆する変化が本水小頭症における多量の脳脊髄液滲出をもたらしたものと考えられた。
  • 平山 紀夫, 千田 恵, 山本 富史, 倉田 一明, 吉川 泰弘, 山内 一也
    1986 年 48 巻 2 号 p. 259-265
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    イヌジステンパーウイルスの株間識別と弱毒マーカーの確立を目的として, 強毒3株と弱毒7株の鶏肝漿尿膜上のポック形成能, 哺乳マウスに対する神経病原性, Vero細胞でのCPE, プラックサイズおよび封入体の特徴, およびウイルス蛋白とRNAの電気泳動パターンを検討した。株間におけるウイルス蛋白とRNAの易動度の相違は大きくなかったが, 生物学的性状にはかなりの差が認められた。特にポック形成能は強毒株では低く, 弱毒株では比較的高かった。哺乳マウスに対する神経病原性は弱毒株で高く, 強毒株では認められなかった。神経病原性の高い株は Vero細胞で大きいプラックを形成する傾向を示した。
  • 熊澤 教眞, 加藤 英一, 中川 幸夫
    1986 年 48 巻 2 号 p. 267-271
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    腸炎ビブリオを経口摂取したヤマトシジミを砂末と人工海水を入れた環流式水槽内で飼育し, 経時的に貝の軟体部乳剤に含まれる摂取菌の生菌数を測定することにより本菌がヤマトシジミに定着する条件を検討した。神奈川溶血毒産生菌D-3株を106 cfu/gの濃度に摂取した貝を60~30%濃度の人工海水中で飼育した結果, 貝から検出される菌数は摂取後4日目に103 cfu/g前後まで減少した後に安定化し, 14日目までほぼ同じ濃度で検出されたが, 摂取後7~14日目の菌数は貝の飼育水の塩分濃度が高いほど多い傾向を示した。60%濃度の人工海水中では摂取後2日目以降, 貝の腸管と中腸腺を含む乳剤から最も多くの菌が検出された。神奈川溶血毒の産生量の異なる腸炎ビブリオ, 3株と大腸菌1株を各々106 cfu/gの濃度に摂取した貝を60%濃度の人工海水中で飼育し, 貝の体内の菌数の推移を比較した結果, 腸炎ビブリオを摂取した貝からはいずれの菌株についても摂取後7日目から28日目まで103 cfu/g前後の菌が検出されたが, 大腸菌は次第に減少し, 21日目には検出されなくなった。以上の成績から, 腸炎ビブリオは本実験に用いた条件下では神奈川溶血毒産生能の有無にかかわらずヤマトシジミの体内で少くとも28日間生残することが明らかになった。
  • 山手 丈至, 田島 正典, 工藤 悟
    1986 年 48 巻 2 号 p. 273-284
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ICRおよびB6C3F1マウスを104週間飼育し, その期間に死亡および生残したマウスの体重, 生存率および病理学的変化を両系統の間で比較した。B6C3F1雌雄マウスの平均体重曲線は65から70週の間で交差し, その後雌の平均体重は雄のそれを上回った。ICRマウスにはこのような所見はなかった。104週齢時に, B6C3F1はICRマウスより高い生存率を示した。肝腫瘍の発生率は, ICR雌雄よりB6C3F1雌雄のほうが高かった。肺腫瘍はB6C3F1雄よりICR雄に頻発したが, 悪性リンパ腫はICR雌よりB6C3F1雌に高頻度に発生した。腎孟拡張および脳の無機質沈着の発生率はB6C3F1雄よりICR雄のほうが高かった。これに対し, 肝細胞変化巣, 尿細管内結石, 副腎皮質の紡錘形細胞増生お上び膵島過形成はB6C3F1雄マウスに頻発した。雌マウスにおいて, 全身性アミロイド症, 腎における蛋白円柱, 嚢胞形成, 腎孟拡張および尿細管上皮黄色々素沈着ならびに卵巣の嚢胞形成はB6C3F1マウスよりICRマウスに多発した。他方, 脾のリンパ濾胞過形成, 副腎皮質の紡錘形細胞増生, 腹腔脂肪の巣状壊死および子宮内膜の嚢胞状過形成はB6C3F1雌マウスにしばしば出現した。
  • 伊沢 義弘, 宇野 洋, 蒔田 徳太郎, 織間 博光, 一木 彦三
    1986 年 48 巻 2 号 p. 285-292
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    7週齢雄ラットに長期間遊泳を負荷したところ, 骨の成長抑制とともに, 骨重量および骨灰分量の減少がみられ, 組織学的に骨粗鬆症に類似の変化が生じた。血中カルシウム, 燐, 副甲状腺ホルモン濃度は無処置対照群と差はなかったが, ビタミンD代謝物のうち25(OH)Dおよび1,25(OH)2D濃度は有意に低値を示した。血中1,25(OH)2D3濃度の低下は腸管カルシウム吸収ならびに骨形成を減少させ, その結果として著明な骨障害を生じたものと考えられた。活性型ビタミンD3 1,24(R)(OH)2D3および1,25(OH)2D3の投与により有意な骨改善効果が認められた。この成績から血中1,25(OH)2D3濃度の低下が骨粗鬆症の1発生要因であることが示唆された。
  • 出水田 昭弘, 古川 誠, 久保田 道雄, 詫間 博, 田原 和英, 児玉 和夫, 幸田 祐一
    1986 年 48 巻 2 号 p. 293-303
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    豚パルボウイルス(PPV) 90HS株のSK細胞低温継代により樹立した弱毒HT-/SK株は, 増殖温度域マーカーを有し, 野生型親ウイルス90HS株と区別され, 90HS株および野外新鮮分離株320NA株とは血清学的に同一の抗原性を有していた。PPV抗体陰性の4か月齢豚および妊娠豚にHT-/SK株を接種したところ抗体産生がみられたが, ウイルス血症もウイルス排出も認められず, 同居感染も成立しなかった。これらの豚を野生株で攻撃すると, ウイルス血症とウイルス排出が完全に阻止された。野生株で攻撃した非免疫対照豚では異常仔の娩出がみられ, 死産胎仔からウイルスが検出されたが, HT-/SK株接種後に野生株で攻撃した妊娠豚では正常分娩がみられ, 初乳吸飲前の産仔の血清にはPPV抗体は検出されず, 胎盤, 胎仔感染防御が成立していた。
  • 松井 寛二, 菅野 茂, 天田 明男
    1986 年 48 巻 2 号 p. 305-312
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    サラブレッド仔馬ならびに母馬各5頭に安静時鼻捻子保定を行い, 心拍数ならびに心電図に現れる変化について比較検討した。仔馬ではいずれの月齢においても, 鼻捻子保定による心拍数の減少は母馬に比較して顕著であり, 仔馬における徐脈効果は鼻捻解除後も少なくとも3~5分間は持続した。仔馬, 母馬ともに鼻捻子保定による心拍数の減少にともなってA-B誘導心電図のT波の陰性成分が増大した。5頭中2頭の仔馬では, 3.5および4力月齢時の鼻捻子保定により, 第2度房室ブロックが誘発され, この現象は再現可能であった。
  • Bonhomme A.
    1986 年 48 巻 2 号 p. 313-322
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウマ盲腸細菌の飼料あるいは牧草細胞壁への付着および各種植物組織の分解について透過電顕的に観察した。植物細胞壁を分解する, 形態学的に異なる盲腸細菌の付着のしかたは異なっていた。球菌は莢膜様物質を介して付着するようにみえた。多くの桿菌および球菌は少量の線維性または粘液状の細胞外物質を介して付着しているようであったが, 一部の桿菌には細胞外物質はみとめられなかった。他の桿菌はその形態を植物細胞壁の形態に合致させるように付着していた。盲腸細菌はTrifolium属あるいは Agropirum属植物の葉およびウマ盲腸から採取した藁をさまざまの様式で分解していた。細菌は葉肉細胞あるいはこれら細胞間において大規模に集落を形成した。細菌は厚膜細胞および本質部維管束組織の木化した厚い壁にも付着していた。腐蝕域に付着あるいは近接して細菌(球菌および桿菌)が位置することから, 細胞外酵素の作用が示唆された。木化組織分解能をもつ盲腸細菌の存在は, これまで知られていなかった盲腸の生態系における重要な生化学的機能を表現するものであった。
  • 上原子 勇一, 板垣 匡, 板垣 博
    1986 年 48 巻 2 号 p. 323-328
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    天北地方は北海道の最北に位置する有数の酪農地帯で肝蛭症の発生が多いが, 冬の気象条件が厳しく, 日本各地で肝蛭の中間宿主となるヒメモノアラガイ L. ollulaは分布していない。本研究では天北地方における肝蛭の中間宿主を決定するため, 豊富町で採集した肝蛭卵を用いて, 天塩町産のコシダカモノアラガイ L. truncatulaとヒロクチモノアラガイ L.auriculariaに対する感染実験を行った。肝蛭は前者だけに感染し, 38~45日後にセルカリアが遊出した。得られたメタセルカリアを山羊に与え, 64~71日目に虫卵の排出がみられ, 剖検により虫体が回収された。以上から, 天北地方における肝蛭の中間宿主はコシダカモノアラガイであることが確認された。
  • 相内 聖峰, 小林 賢, 内海 文枝, 佐久間 貞重
    1986 年 48 巻 2 号 p. 329-339
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    N-メチルニトロソウレア(MNU)により誘発した奇形性水小頭症ラットの軟膜・クモ膜を1, 3, 12および27週齢において形態学的に検索した。1週齢ではクモ膜小柱の部分的崩壊が観察され週齢の進展とともにクモ膜下腔は拡張した。竜頭的に, 3週齢のクモ膜細胞は互いに不規則に嵌合した多角形を示し, 大部分の細胞では核内クロマチンの減少, 多数の腫大又は濃縮したミトコンドリア, 嚢胞状又は水様液を含む粗面小胞体および微細線維の増加が認められた。12週齢でのクモ膜は著しく菲薄となり, クモ膜細胞には短管状の粗面小胞体, 濃縮したミトコンドリアならびに少数の変化した細胞内小器官が存在するのみであった。不規則に配列した軟膜細胞には核内クロマチンの辺縁局在化と減少, 濃縮したミトコンドリアおよび拡張した粗面小胞体がみられ, 軟膜下実質には少数のマクロファージを伴った基底板の著明な凹凸不整化と, 多数の腫大した星状膠細胞の突起が観察された。27週齢ではクモ膜の菲薄化を伴ったクモ腸下腔の著しい拡張と軟膜下実質に単核円形細胞の浸潤を随伴した海綿状変性が認められた。
  • 日笠 喜朗, 高瀬 勝晤, 小笠原 俊美, 小笠原 成郎
    1986 年 48 巻 2 号 p. 341-351
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    鯉におけるトリカインメタネスルフォネイト (MS-222), オイゲノール(FA-100)およびチオペンタールナトリウム(RABONAL)の麻酔効果と覚醒について検討した。麻酔は薬浴法で行ない, 麻酔および覚醒中の鯉の行動と呼吸数の変化, さらに麻酔と覚醒効果に対する水温(10および20℃)の影響を調べた。FA-100(25-100ppm)およびRABONAL (200および300ppm)濃度の上昇は, 各麻酔ステージへの導入を速め, 覚醒を遅延させた。高濃度のMS-222 (50-200ppm)は麻酔の導入を速めたが, 覚醒時間には濃度間に著変はみられず, 他の剤と比べ, 速い覚醒を示した。FA-100およびRABONAL麻酔により呼吸数は減少した。一方, MS-222麻酔では, 呼吸数は麻酔中増加し, 覚醒中減少し, 正常数に回復した。水温の上昇は, それぞれの麻酔薬による麻酔の導入と覚醒を共に速めた。
  • アベネス ヘラルド・B, 喜田 宏, 梁川 良
    1986 年 48 巻 2 号 p. 353-362
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ニューカッスル病ウイルス佐藤株のHN蛋白に対する単クローン性抗体を作出した。7クローンの抗体はウイルスの生物活性に対して様々な阻止パターンを示した。ある抗体はウイルスのノイラミニダーゼ(NA)を阻止したが血球凝集(HA)は阻止しなかった。この所見はパラミクンウイルスのHN蛋白分子上でHAとNAの活性部位が異なるとの考えを支持した。この抗NA抗体はウイルスが細胞に吸着した後に加えられても, もはやウイルスの感染性を中和しなかった。従って, 感染の初期過程でNAが役割を演じている可能性が考えられた。また他の単クローン性抗体はウイルスのHA, NAおよび溶血活性を阻止するにもかかわらず, 感染性を中和しなかった。他方, ウイルスのHAもNAも阻止しないが, 溶血および感染性を阻止する抗体も得られた。以上の所見から血球と宿主細胞で, レセプターまたは膜の構造が異なるか, あるいは抗HN抗体によるウイルスの感染性中和が, ウイルスの細胞への吸着やNA活性の阻止以外の機序でも成立することが示唆された。
  • 江島 博康, 黒川 和雄, 池本 卯典
    1986 年 48 巻 2 号 p. 363-368
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    日本におけるイヌ15品種の赤血球型出現頻度と遺伝子頻度について, 13種類の赤血球型判定用抗体を用いて調査した。DEA1, DEA3, DEA6, DおよびJ1システムはその赤血球型の頻度に品種間の明らかな差を認めた。それらの中で, とくに, Dシステムは日本在来種と欧米産種との間に明らかな偏在性を認めた。すなわち, 日本在来種の秋田種, 柴種のD1遺伝子頻度は高く, 一方, 欧米産の品種では逆にD2遺伝子頻度が高い値を示し, 日本産雑種はその中間に位置する値を示した。他のシステムにおいては, 日本在来種を特徴づけるような偏在性は認められなかった。なお, いずれの赤血球システムもそれらの頻度と性差との関連性はみられなかった。
  • 杉山 芳宏, 高島 郁夫, 橋本 信夫
    1986 年 48 巻 2 号 p. 369-375
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    エルシニア属菌の病原性解析の一環として, 培養細胞を用いて感染の第一段階である細胞吸着と病原性との関連性を検討した。エルシニア属菌の細胞吸着性はカルシウム依存性プラスミドの保有により増強された。また37℃で細胞吸着を行った場合, プラスミドを保有する37℃増殖菌の細胞吸着性は25℃増殖菌のそれに比べて著しく強かった。しかもこの吸着性は, Y. pseudotuberculosisの方がY. enterocoliticaよりも高いことからエルシニア属菌の毒力の指標になると判断された。同様の現象はホルマリン不活化菌でも認められ, エルシニア属の37℃培養プラスミド保有菌においてホルマリン耐性の吸着増強因子の産生が示唆された。
  • 小山田 敏文, 吉川 尭, Hiroyasu YOSHIKAWA, 清水 まき子, 中井 豊次, 久米 勝己
    1986 年 48 巻 2 号 p. 377-387
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Pasterella multocida (Pm) SP-72株お上び47459株とBordetella bronchiseptica (Bb) L3株を1週齢SPF豚の鼻腔内に単独あるいは混合接種し, 7あるいは9週後に病理学的観察を行った。両菌は実験期間中鼻腔より回収されたが, 回収菌数はBbがはるかに多く, 炎症性変化もBb接種豚で明らかであった。Pm接種豚の鼻甲介は肉眼変状を示さず, 組織学的には骨細胞性骨融解による骨梁の吸収が存在するものの, 活発に増生した骨芽細胞と類骨に置換していた。これに対し, 肉眼的に明らかな萎縮が認められたBb接種豚の鼻甲介には破骨細胞性骨融解による重度の穿孔性骨梁吸収が認められ, 同時に骨芽細胞障害による骨新生の減弱と骨梁周囲の線維増生を伴っていた。Pm. Bbを混合接種した場合の骨梁病変はBb接種のそれよりも重度であった。以上の成績から両菌の鼻甲介に対する病原性は明らかに異なり, AR病変の形成は主にBbで展開されることが強く示唆された。
  • 奈良間 功, 土谷 稔, 鈴木 義孝
    1986 年 48 巻 2 号 p. 389-398
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    43例の老齢F344ラットの非腫瘍性結節性膵病変について病理組織学的に検索し, 老齢SDラットの同病変をオートラジオグラフィーを用いて検索した。病巣は基本的には膵外分泌組織の増殖した腺管様構造による置換であった。腺管を裏う^^・ち^^・する上皮細胞の核はしばしば腫大し, 有糸分裂像も散見された。これらの上皮細胞の核には活発な核酸合成がオートラジオグラフィーにより確認された。これらの腺管上皮は腺管単位で腺房あるいは島細胞集簇に移行し, 介在部導管上皮に類似した未熟な円柱上皮と腺房細胞のさまざまの過程の移行型細胞が認められた。腺管上皮から移行した島細胞は免疫組織化学的にインスリン, グルカゴンおよびソマトスタチン陽性を示し, これら3種の島細胞の比率, 形態, 等も正常島におけるものに類似していた。以上の結果から, 老齢ラットの非腫瘍性結節性膵病変が再生性病変であることが示唆された。また, 未熟腺管上皮が腺房細胞と島細胞の双方に分化し得る可能性も示唆された。
  • 相内 聖峰, 内海 文枝, 小林 賢一, 黒崎 映子, 佐久間 貞重
    1986 年 48 巻 2 号 p. 399-403
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    21カ月齢の雄 Wistarラット1例の小脳虫部軟膜に顆粒細胞腫がみられた。組織学的には, 多形性で細胞質にPAS陽性顆粒をもつ腫瘍細胞が索状または胞巣状に増生していた。電顕的には腫瘍細胞は顆粒細胞腫の特徴を示し, 少数の粗面小胞体とリボゾームを含む dense bodies が時折みられ, 接着構造が隣接細胞間に存在した。
  • 高井 伸二, 両角 能彦, 東山 奏, 椿 志郎
    1986 年 48 巻 2 号 p. 405-408
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    定量NBT還元試験を, 新生馬24頭, 成馬10頭, および R. equi自然感染馬1頭の好中球について行った。新生馬およびNBT成馬好中球の間に還元能の差は認められなかった。R. equi自然感染馬1頭の出生時における好中球のNBT還元能は, 正常値の範囲にあり, 発病後には, 好中球の自発的NBT還元能が著しく増加した。
  • 代田 欣二, 伊藤 豊志雄, 鍵山 直子
    1986 年 48 巻 2 号 p. 409-411
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    14週齢のSprague-Dawleyラットに小脳原発腫瘍を認めた。腫瘍組織は細胞密度が著しく高く, クロマチンに富む核あるいは胞状核を持ち細胞質に乏しい小型の未分化細胞よりなっていた。核分裂像は頻繁に認められ, 腫瘍細胞の充実性の集塊はしばしば細い血管・結合織によって区画されていた。腫瘍の1力所には多数の筋芽細胞が認められ, この腫瘍を髄芽細胞腫の特殊型である髄筋芽腫と診断した。
  • 渋谷 一元, 田島 正典, 山手 丈至, 須藤 三重子, 工藤 悟
    1986 年 48 巻 2 号 p. 413-417
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    自然発生肺泡沫細胞(PF)が, 13-150週齢のFischer 344ラット雄雌989匹のうち97匹に認められた。PFは52週齢ラットに初めて出現した。肺におけるPFの出現頻度とその程度は加齢とともに増加し, 120週齢以上のラットで最高出現率(28.8%)を示した。PFは肺胞内に最もしばしば出現し, 一般に円形で, 豊富な泡沫状細胞質と比較的小型の核をもっていた。血漿コレステロールは加齢とともに増加し, 一見, 肺におけるPF出現率と相関した。
  • 高橋 秀之, 村田 英雄, 松本 英人
    1986 年 48 巻 2 号 p. 419-422
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン雄仔牛について, 軽度の寒冷暴露(2℃, 60%RH)が血漿インスリン, グルカゴンおよびコルチゾール濃度に及ぼす影響をしらべた。血漿インスリン, グルカゴン, コルチゾールのいずれも寒冷暴露直後(30分)の上昇反応が認められた。一方, 寒冷暴露にともなう遅延反応として, 血漿コルチゾールが暴露開始後4日を最大値とする上昇反応が認められ, 血漿インスリンおよびグルカゴンも8日間の暴露期間中, 持続的な上昇反応が認められた。
  • 平野 紀夫, 佐藤 れえ子, 松田 幸久
    1986 年 48 巻 2 号 p. 423-427
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    岩手大学家畜病院に来院したネコと, 健康と思われる研究用ネコからウイルス分離を行なった。呼吸器病のネコ65例中29例からヘルペスウイルス2株とカリシウイルス29株が分離され, 他の疾患のネコ49例と研究用ネコ50例からは, 各2例からカリシウイルス株が分離された。
  • 湊 良雄, 高田 博, 山中 久, 小嶋 明廣, 和田 功, 武下 政一, 岡庭 梓
    1986 年 48 巻 2 号 p. 429-432
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    68週齢のラット1例の大網および腸間膜に認められた多形性脂肪肉腫を病理組織学的に検討した。腫瘍は明調で大きな核と豊富な細胞質をもつ円形の細胞と暗調で長楕円形の核をもつ紡錘形の細胞とから構成されていた。円形の細胞の拡張した粗面小胞体腔に脂肪合成の像を認め, 加えて円形および紡錘形の細胞の基質に限界膜をもたない大小様々の脂肪滴を認めた。以上の所見から本腫瘍は多形性脂肪肉腫と診断された。
  • 伊藤 進午, 志村 亀夫
    1986 年 48 巻 2 号 p. 433-435
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Besnoitia wallacei のオーシスと猫由来Isospora bigemina大型種との比較を行った。前者のハムスターへの感染性は軽度ながら認められ, また感染猫腸内のシゾントの大きさも後者と差がなかった。さらに両者は血清学的にも免疫学的にも一致した。
  • 松下 悟
    1986 年 48 巻 2 号 p. 437-440
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    3力月齢のWistar/Msラット1例に, 捻髪性異常呼吸音を示す呼吸器病が発生した。その肉眼病変は肺の腫大, 小無気肺巣および気管支拡張であった。組織学的には, 粘膜固有層における円形細胞浸潤を主体とした気管炎, 気管支炎, 細気管支炎, ならびにそれらの周囲炎が認められた。病変部の呼吸道上皮細胞の線手間隙には, 光顕・電顕的に, CAR bacillusとみなされる細菌が多数認められた。
  • 納 敏, 一条 茂
    1986 年 48 巻 2 号 p. 441-444
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    分離・精製したウシミオグロビンを抗原として抗ウシMb血清を作成し, 免疫学的方法によるMbの検出の可否について検討した。牛の骨格筋から硫酸アンモニウム分画法によって分離し, リン酸緩衝液中で結晶化操作を2回行った結果, 純度の高いメトミクグロビンの結晶が得られた。作成した抗ウシMb家兎血清はMbと特異的に反応し, かつ仔牛の栄養性ミオパチーにおける血中および尿中のを検出することができた。
  • 高井 伸二, 竹内 泰造, 椿 志郎
    1986 年 48 巻 2 号 p. 445-448
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    健康豚の顎下リンパ節148検体から R. equiを11株(7.4%), 非定型抗酸菌を7株(4.7%), および, 腸間膜リンパ節90検体から, 非定型抗酸菌のみを17株(18.9%), それぞれ分離した。顎下リンパ節148検体のうち, 3検体(2.0%)からR.equiと非定型抗酸菌が同時に分離され, R. equiあるいは非定型抗酸菌のみが分離されたのは, それぞれ, 8検体(5.4%), および4検体(2.7%)であった。豚のリンパ節は, R. equiおよび非定型抗酸菌の存在に好適な環境であることが示唆された。
  • 白井 淳資, 前田 稔, 日原 宏
    1986 年 48 巻 2 号 p. 449-451
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    脚弱症状を主徴とし, 脳および脊髄に非化膿性脳炎像をみる疾病が82日齢の野外鶏群に発生し, 病鶏の脳から中等度の毒力をもつニューカッスル病(ND)ウイルス(TY-1株)が分離され, 6か月齢SPF鶏への接種実験で, 野外におけると同様の症状および病変が再現された。これらのことから, 脚弱症状および中枢神経に明らかな病変をおこすNDウイルスの存在が示された。
feedback
Top