抄録
Yersinia pestis, Y. pseudotu berculosisおよびY. enterocoliticaのV抗原を抽出し, 病原性との関係を検討するとともに単クローン性抗体による抗原解析を行った。Yersinia属菌の病原性とV抗原の産性は, 40~48Mダルトンのプラスミドの保有に依存することが確認された。Y. pseudotu berculosisの培養上清からはプラスミド保有菌のみが産生する分子量150Kダルトンのタンパク複合体が抽出され, このタンパク複合体はSDS-PAGEによって分子量31K, 38K, 56K, 66Kダルトンの4種類のタンパク質に分解された。38±2Kダルトンのタンパク質はDEAEセルロースクロマトグラフィーで0.1M NaCl水溶液流出画分中に含まれ, 既知のV抗原分子量とも一致した。抗Y. pseudotu berculosis V抗原単クローン性抗体を用いた抗原解析では, Western blotting法とELISAにより, 40~48Mダルトンプラスミド保有菌でのみV抗原の産生が確認された。また, V抗原はYersinia属菌に共通して産生されるものの, 単クローン性抗体に対する反応はホモの組合わせで最も高く, 菌種間で抗原性が相違することが示唆された。