日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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49 巻, 2 号
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  • 清水 晃, 河野 潤一, 木村 重
    1987 年 49 巻 2 号 p. 207-215
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    9種類の健康・病例動物およびヒトから分離されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌 (CNS) 226株について, Kloos & Schleiferの簡易同定法によって菌種分類し, ついでPulvererらのヒト由来Staphylococcus epidermidisファージセットを用いて, 型別を試みた。226株中109株 (48.2) %が1xRTDで型別でき, 宿主由来別の型別率はヒト60.0%, ウシ54.5%, ウマ50.0%, ブタ40.7%, イヌ100%, ウサギ53.8%, マウス100%, ニワトリ37.7%, ハト0%, ウズラ100%であった。型別された菌株のファージパターンは合計33であり, 最も多いパターンはPh5/Ph9/Ph10/Ph12/Ph13/U4/U14/U16/U20/U46 (64株) で, ついで15種すべてのファージに溶菌される株 (7株) であった。菌種との関連でみると, Phシリーズの5, 9, 10, 12, 13およびUシリーズの4, 14, 16, 20, 46はS. xylosus, S. simulans, S. epidermidis, S. cohnii, S. haemolyticus, S. capitis, S. warneriと多くの菌種に溶菌活性を示した。ファージPh6, Ph14, Ph15, Ph16, U15の溶菌域はS. xylosusとS. epidermidisの2菌種に限定されていた。また, 動物由来CNSの溶原株から分離した7ファージを, 226株に応用したところ, 27株 (11.9%) が型別されたにすぎなかった。しかし型別できた菌株は1株を除いてすべて動物由来のものであった。S. simulansおよびS. cohniiの溶原株由来ファージはそれぞれの菌種の菌株を溶菌する傾向を示した。
  • 前田 稔, 小泉 俊二, 谷内 宗臣, 岩崎 正幸, 大久保 孝明
    1987 年 49 巻 2 号 p. 217-223
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    日本のレース鳩群に1983年から1984年にかけてニューカッスル病 (ND) が流行した。病鳩は神経症状と下痢を示し, 死亡率は発症鳩の13%であった。9鳩群から33羽の病鳥を収集し病理学的検査を行なった。肉眼的には共通病変は認められなかった。33羽のうち15羽, すなわち, NDウイルスが分離された10羽 (group1) およびウイルス分離を実施しなかったが赤血球凝集抑制 (HI) 抗体が検出されなかった5羽 (group2) に見られた組織変化は, 非化膿性脳脊髄炎のほかに, 脾・ファブリキウス嚢・胸腺のリンパ組織の萎縮または壊死, 脾炎, 腎炎, 肝炎であった。33羽中の他の18羽 (group3) ではHI抗体が検出され, NDウイルスは分離されず, 注目された病変は脾におけるリンパ組織の増生, 腎における濾胞状リンパ組織の増生および非化膿性脊髄炎であった。今回のレース鳩に流行したNDでは, NDウイルスの向内臓および向神経侵襲性が示唆された。
  • 伊藤 純治, 木曽 康郎, 山内 昭二
    1987 年 49 巻 2 号 p. 225-233
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ネコの胎盤および卵巣についてハイドロキシステロイド脱水素酵素 (HSD) を組織化学的に検出し, 胎盤におけるステロイドホルモン産生能を検討した。胎盤におけるΔ5-3β-HSD活性は迷路部および接合帯の栄養膜のみに局在し, 妊娠初期から弱度ながら活性がみとめられ妊娠経過とともに徐々に上昇して, 妊娠約45日前後に最高に達し, その後やや減少した。17β-HSD活性は妊娠期を通じて弱度の活性が子宮腺の腺上皮にのみ局在した。20αおよび20β-HSD活性は全時期検出されなかった。G-6-PDH活性は栄養膜および腺上皮に局在した。卵巣におけるΔ5-3β-HSD活性は, 黄体, 卵胞膜および間質腺に局在した。黄体における酵素活性は妊娠初期から中期にかけて強度であり, その後減少した。以上の成績から, ネコの胎盤におけるprogesterone産生は迷路部および接合帯の栄養膜で行なわれ, 妊娠45日以後の妊娠維持にきわめて重要であることが示唆された。
  • 佐々木 隆志, 前出 吉光, 波岡 茂郎
    1987 年 49 巻 2 号 p. 235-243
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    豚腸内菌叢のひとつBifidobacterium thermophilum由来ペプチドグリカン (PG) を子豚の生下時から5日齢まで, および3週齢に1日1回3日間経口投与し離乳後の5および6週齢の小腸各部粘膜固有層における免疫グロブリン (Ig) 保有細胞数および小腸内大腸菌数をしらべ, PG非投与豚におけるそれらの成績と比較した。PG投与後の5および6週齢における小腸中部および回腸粘膜固有層Ig保有細胞数は非投与群のそれに比べて有意 (Pく0.01) に多かった。また, PG投与および非投与群の該部におけるIgAおよびIgM保有細胞数の比率をみると, 前者ではIgA保有細胞数がIgMのそれを上回った反面, 後者ではその比率が逆転していた。さらに, 小腸各部位における大腸菌数では, PG投与群のそれらは非投与群に比べて少なかった。以上の成績から, 哺乳期子豚におけるPG投与後子豚の消化管局所の免疫応答応が増強されることが示唆された。
  • 中井 裕, 扇元 敬司
    1987 年 49 巻 2 号 p. 245-249
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Eimeria tenellaの国内分離株を鶏胚で51代継代培養しても鶏胚での増殖率や致死作用に変化はみられなかった。鶏胚45代あるいは51代継代株をニワトリひなに接種すると鶏胚通過初代株に比べて盲腸病変および血便は軽く, 増体量, および飼料効率は高かった。
  • 林 恭行, 児玉 洋, 見上 彪, 伊沢 久夫
    1987 年 49 巻 2 号 p. 251-260
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    3株のサケ科魚類由来ヘルペスウイルス (H-83株, Oncorhynchus masou virus (OMV)のOO-7812株およびHerpesvirus salmonis)のDNA切断パターンを, ウイルス感染細胞から抽出したDNAの制限酵素を用いて解析した。切断パターンは精製ウイルスのそれと完全に一致し, 明瞭なウイルスDNA切断パターンを得るために心要なウイルス感染細胞数は約1.1×105個であった。また, in vitroにおけるウイルス継代がDNA切断パターンにおよぼす影響を調べたところ, H-83株 (33代断代) およびOMV (36代継代) にあっては切断々片のいくつかが消失あるいは新たに出現したが, H. salmonis (36代継代) のそれは変化しなかった。継代開始時にヤマメ稚魚に対して強い病原性を保持したH-83株およびOMVは, 継代により明らかに減弱の傾向を示した。
  • 北川 均, 佐々木 栄英, 松井 昭秀, 石原 勝也, 内山 智晴
    1987 年 49 巻 2 号 p. 261-266
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬糸状虫症犬と健康犬の血清ハプトグロビン (Hp) 濃度をヘモグロビン結合能として測定した。健康犬13例の血清Hp濃度は114.8±31.5 (S. D.) mg/dlであった。犬糸状虫症軽症群33例では0から349.5mg/dlの広範囲に分布し, その平均値は75.1±151.4mg/dlであった。この群の血清Hp濃度は呼吸器症状を示した例で高く, また, 尿または腎臓のヘモジデリン陽性例では低値であった。慢性重症群17例では, その平均値は33.7±59.8mg/dlであった。この群では2例のみがやや高い血清Hp濃度を示したが, 8例 (47.1%) は消失ないし痕跡程度 (0mg/dl) の濃度であった。血色素尿症群21例では, 9.9から135.0mg/dlの範囲にあり, その平均値は48.2±29.5mg/dlで, 慢性重症群より高値であった。また, 血色素尿症群では, 全例で血漿ヘモグロビン濃度が血清Hp濃度より高値であった。以上の所見から, 血色素尿症のみならず軽症および慢性重症の犬糸状虫症でも血管内溶血が潜在していることが示唆された。
  • 杉山 芳宏, 高島 郁夫, 橋本 信夫
    1987 年 49 巻 2 号 p. 267-278
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Yersinia pestis, Y. pseudotu berculosisおよびY. enterocoliticaのV抗原を抽出し, 病原性との関係を検討するとともに単クローン性抗体による抗原解析を行った。Yersinia属菌の病原性とV抗原の産性は, 40~48Mダルトンのプラスミドの保有に依存することが確認された。Y. pseudotu berculosisの培養上清からはプラスミド保有菌のみが産生する分子量150Kダルトンのタンパク複合体が抽出され, このタンパク複合体はSDS-PAGEによって分子量31K, 38K, 56K, 66Kダルトンの4種類のタンパク質に分解された。38±2Kダルトンのタンパク質はDEAEセルロースクロマトグラフィーで0.1M NaCl水溶液流出画分中に含まれ, 既知のV抗原分子量とも一致した。抗Y. pseudotu berculosis V抗原単クローン性抗体を用いた抗原解析では, Western blotting法とELISAにより, 40~48Mダルトンプラスミド保有菌でのみV抗原の産生が確認された。また, V抗原はYersinia属菌に共通して産生されるものの, 単クローン性抗体に対する反応はホモの組合わせで最も高く, 菌種間で抗原性が相違することが示唆された。
  • 江口 正志, 横溝 祐一, 国安 主税
    1987 年 49 巻 2 号 p. 279-283
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    馬由来Klebsiella pneumoniae34菌株の生化学的性状を調べた。供試菌株はズルシトールとソルボースの発酵性及びウレアーゼ産生性により4種類の生化学的性状型に区分された。子宮炎罹患馬由来全菌株 (20株) と種雄馬包皮由来11菌株中1菌株, 子馬肺由来1菌株が1型莢膜を保有したが, これら菌株はすべて同じ生化学的性状型に属した。1~6型以外の莢膜を保有する種雄馬及び子馬由来菌株はソルボースを発酵する点で1型莢膜保有菌株とは区別された。このことから, 繁殖雌馬に子宮炎を起こす1型莢膜保有K. pneumoniaeの同定にソルボース発酵性試験が有用であることが示唆された。
  • 北川 均, 佐々木 栄英, 森 昌昭, 石原 勝也
    1987 年 49 巻 2 号 p. 285-293
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    健康犬 (対照群, n=18), 犬糸状虫性血色素尿症 (血色素尿症群, n=19) 及び慢性重症の犬糸状虫症 (重症群, n=12) の血清, リポ蛋白質及び赤血球膜の脂質をTLC-FID (薄層クロマトグラフィー・水素炎イオン化検出法) 法により分析定量した。対照群と比較して, 血色素尿症群と重症群では, 血清free cholesterol (FC) 濃度, 赤血球膜FC含量及びFC/PL比は高く, 血清cholesterol ester (CE) 比は低値で, 既報の化学的方法による成績とほぼ一致した。血清triglyceride (TG) 濃度は重症群で高値であった。血色素尿症群では, 血清と赤血球膜のsphingomyelin (SM) は高値であったが, 他のPLは高値を示さず, この群にみる血管内溶血はPLとの直接的関連性を指摘できなかった。慢性重症群では, 血清のlysophosphatidyl choline (lyso-PC) 濃度は低く, 血清のSM, 赤血球膜のphosphatidyl serine, 及び総PL量は高値であった。血色素尿症群の高比重リポ蛋白質 (HDL) 濃度は低く, 低比重 (LDL) 及び超低比重 (VLDL) リポ蛋白質濃度は高かった。また, HDLのCE, PC, lysopc及び総PL量は低く, LDLではFCをはじめすべての脂質分画が高値であった。血清と赤血球膜のFCの増加はLDLのFC増加が原因であり, SM以外のPLの減少は血清HDL濃度の減少と関連していた。血色素尿症群の脂質代謝異常はさらに顕著であったが, 重症群類似の傾向と考えられた。
  • 中澤 素邦, 谷山 弘行, 奈良間 功, 小野 威
    1987 年 49 巻 2 号 p. 295-301
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    東南アジアから輸入された18頭のカニクイザル (Macaca fascicularis)に見られたhepatocystisの肝病変について病理組織学的検索を行い, 病理発生について考察を試みた。肝臓のみに認められた病変はhepatocystisの生活史のうちの赤血球外性のシゾゴニー期を示すものであった。それはメロシストの形成とメロゾイトの放出, そしてこれに肝組織の退行性および進行性の変化を伴うものであったが, 多くの例では主として未熟なあるいは成熟したメロシストがメロゾイト未放出のままに肉芽組織によって破壊・吸収される像が認められた。これらの病変の多くは瘢痕化の過定にあり, 球形で細胞成分に乏しい結合組織から成っていた。3例を除いて, シゾントの初期発育像や成熟メロシストのメロゾイト放出による壊死性病変は入国後20日以内の例に認められた。本原虫の寄生はメロシストの破壊を伴わない限り, 宿主には大きな障害は与えないので十分な検疫期間を経た個体は特殊な実験でない限り実験用動物として利用できると考えられた。しかし, 入国後60日以上を経た少数例にシゾントの初期発育像が認められた事は本原虫の生活史の複雑さを示唆するものであった。そのメロシストの独特な構造や宿主の地理的分布から, 今回の例はHepatocystis semnopitheciによるものと考えられた。
  • 二宮 博義, 中村 経紀
    1987 年 49 巻 2 号 p. 303-312
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    WistarおよびSHRラット (雌12~26カ月齢) の乳腺に発生した線維腺腫の血管系を, 樹脂鋳型走査型電子顕微鏡法により立体的に観察した。注入剤methacrylic methylester monomerに硬化剤を加え, 左心室から全身に注入, 樹脂の硬化後NaOHに漬けて血管の鋳型を得た。腫瘍を支配する血管は外側胸動脈と浅腹壁動脈で, 腋窩部および前胸部に発生した腫瘍は主に前者により, 鼠径部に発生した腫瘍は主に後者により支配されていた。これらの血管は腫瘍侵入直前の部位が太く直線的であった。腫瘍内の血管分布には規則性がなく, 腫瘍表層に血管が多く認められた。腫瘍内毛細血管のうち, 細い血管 (5~12μm) は主に線維部に, 太い洞様血管 (40~50μm) は主に腺組織周囲に分布していた。正常血管分枝部にはintraarterial cushionが存在して末梢の血流を調節しているが, 腫瘍血管にはこの装置が存在しないことが示された。
  • 西川 禎一, 鎌田 洋一, 馬場 威
    1987 年 49 巻 2 号 p. 313-321
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ラットの子宮内に大腸菌を接種した場合, エストラジオール (E2) の影響下では, 不顕性に経過した。しかし, E2作用を受けていない子宮あるいはプロジェステロン優勢状態の子宮においては, 化膿性子宮内膜炎が誘発された。E2が子宮分泌液の増加と貯留をひきおこすことから, 分泌液に発病阻止能力があるか否か調べたところ, 卵巣摘除ラットの子宮頚管結紮によって分泌液を貯留させた場合にも, E2投与ラットから分泌液を移入した場合にも, 大腸菌接種による子宮内膜炎の発生を抑制することはできなかった。性周期各期の子宮ならびに各種ホルモン処置ラットの子宮について, 肥満細胞数, 好酸球数, 子宮内膜上皮細胞の増殖程度, 細胞の大きさを調べたところ, E2影響下で大腸菌感染が不顕性化する子宮においては, 常に内膜上皮細胞の丈が高く, E2は子宮内膜上皮細胞の性状を変化させて, 大腸菌感染に対する抵抗性を高めているものと推察された。
  • 昆 泰寛, 橋本 善春, 北川 浩, 工藤 規雄
    1987 年 49 巻 2 号 p. 323-331
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    コイ腎臓の糸球体傍細胞はBowie, 過ヨウ素酸シッフーヘマトキシリン, トルイジン青 (pH12) 染色で弱陽性を示した。電顕的には大型明調核, よく発達したゴルジ装置, ときに槽の拡張した粗面小胞体, 平均直径約230nmの分泌顆粒ならびに収縮要素としての筋原繊維, 付着板が細胞質内に観察された。抗マウス下顎腺レニン血清を用いた免疫組織化学では多数の陽性細胞が主に輸入糸球体細動脈や小動脈の中膜域にみとめられ, ときに小動脈の中膜, 外膜境界領域に観察された。一細胞内におけるその免疫反応は内膜側においてよりも外膜側でより強かった。輸出細動脈壁ならびに血管間膜領域に陽性細胞はみとめられなかった。これらの結果から魚類においても哺乳類同様レニンを介する血圧調節機構が腎臓内に存在することが示唆された。
  • 磯部 尚, 鈴木 恭
    1987 年 49 巻 2 号 p. 333-339
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ペルオキシンダーゼ標識抗鶏IgM (μ) 抗体及び抗鶏IgG (Fc) 抗体を作製し, Leucocytozoon caulleryi感染鶏におけるクラス別抗体応答についてELISAを用いて調べた。実験感染鶏血清においてIgM抗体はスポロゾイト (Sp) 接種後10日から検出され始め, Sp接種後3週で最も高い値を示した後, 漸次低下し, 以後低いレベルで推移していた。一方, IgG抗体はSp接種後14日から検出され始め, 徐々に上昇し, Sp接種後8~10週で高い値を示した。自然感染鶏血清においては, IgM及びIgG抗体とも原虫検出後, 高い値を示すが, その後IgG抗体が高いレベルで翌年度まで推移するのに対し, IgM抗体は低いレベルで推移していた。
  • 樋口 誠一
    1987 年 49 巻 2 号 p. 341-347
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    フタトゲチマダニの若ダニの中腸におけるタイレリア原虫 (Theileria sergenti) の発育について観察した。飽血直後の中腸では, 消化管内容物中に赤血球内及び血球外のメロゾイトが観察され, 飽血後24時間以内では1.0~2.5μmで点状, コンマ状および柳葉状を呈するメロゾイトが赤血球外に数多く観察された。その後, これらのメロゾイトは, 飽血後24~48時間内に, 直径1~2μmの比較的大きな輪状形のいわゆるring-formに変形した。48~72時間以内では, ring-formは3~4μmで好酸性を呈しround-formのマクロガメートと, 長さ5μmで糸状のミクロガメート様虫体に発育した。飽血3~5日後の間には, 腸内に長さ4~5μmで円形または楕円形のチゴートを検出した。さらにこれらチゴートは, 6日頃以降次第に消化管から消失し飽血後9日には, ダニ中腸上皮細胞内で4~5μmの円形の増殖体として観察された。
  • 河上 栄一, 筒井 敏彦, 山田 陽一, 小笠 晃, 山内 亮
    1987 年 49 巻 2 号 p. 349-356
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    片側性陰睾犬29頭の造精機能を究明する目的で, 精巣, 精巣上体および前立腺の組織学的検索を行うとともに, 末梢血および精巣静脈中androgen, すなわち4-androstenedione (A), 5α-dihydrotestosterone (DHT) およびtestosterone (T) 値をRIA法で測定した。陰睾精巣の精細管直径は, 正常犬の約1/2 (平均125μm) であり, 1/3の例で精細管内には精母細胞が認められたが, 全例で精子細胞および精子は認められず, 間質のLeydig細胞に萎縮傾向がみられた。また, 下降側精巣の精細管内の精母細胞数, 精子細胞数は, 正常ビーグルよりも有意に少なかった (P<0.01)。陰睾側精巣上体および前立腺の発達は正常犬よりやや劣っていた。これら陰睾犬の精巣静脈血中AおよびDHT値は, 左右ともに正常ビーグルよりも有意に高値を示した (P<0.01) が, 逆にT値は左右ともに有意に低値を示した (P<0.01)。末梢血中androgen値も, 精巣静脈血のそれとほぼ同様の傾向を示した。
  • 磯部 尚, 鈴木 恭
    1987 年 49 巻 2 号 p. 357-359
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Leucocytozoon caulleryiのスポロゾイトをSPF鶏に静脈内接種し, 50週間, 臨床症状の観察, 末梢血液中の原虫検出, 血清中のELISA抗体の測定を行った。臨床症状および末梢血液中の原虫は, スポロゾイト接種後2週から10日間にのみ観察された。一方, 血清ELISA抗体は, スポロゾイト接種後2週から検出され, 50週後まで高いレベルで検出された。
  • 井上 誠, 後藤 直彰, 佐藤 昭夫, 白水 完治
    1987 年 49 巻 2 号 p. 361-363
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    14歳, 雄, 雑種イヌの大脳視床下部に発生した多形性膠芽細胞腫について病理学的に観察した。腫瘍は大脳底に浸潤増殖し, 右眼球内への転移を示し, 組織学的には, 主に不整形の核をもつ未分化細胞によって構成されていた。腫瘍細胞は多形性が強く, 小型円形細胞の増殖の著明な部位および大型の多核細胞の混在する部位がみられた。腫瘍組織内には小血管の顕著な増加と血管周囲性に線維芽細胞の増殖が認められた。
  • 西森 知子, 今田 忠男, 桜井 通陽, 北林 卓, 川村 斉, 中島 英男
    1987 年 49 巻 2 号 p. 365-367
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1981~1985年にかけてわが国で分離されたオーエスキー病ウイルス14株について, 感染細胞から全DNAを抽出し, 制限酵素Bam HIによる切断パターンを調べた。14株すべてが, 主に中部ヨーロッパに多いタイプIIに属していた。これらの株は, 第8フラグメントが存在する群と存在しない群の2群に分かれ, 後者はすべて1985年に関東地方で分離された株であった。
  • 元井 葭子, 竹内 正太郎, 中島 靖之
    1987 年 49 巻 2 号 p. 369-372
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Fusobacterium necrophorum接種による肝膿瘍発症中の血漿総カリクレインとプレカリクレイン活性は, 接種後10日から非発症中と生理食塩水注入対照中にくらべて著明に高値を示し, 以後30日まで高い活性を継続した。
  • 岡田 幸助, 坂口 一平, 沼宮内 茂, 間 陽子, 小沼 操, 大島 寛一
    1987 年 49 巻 2 号 p. 373-377
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウシ白血病腫瘍関連抗原の本態を明らかにする目的で, 正常ウシ胎仔および非地方病性ウシ白血病の仔牛から得られた各組織について, 単クローン性抗体を用いた酵素抗体法により検索した。全例の胸腺髄質のリンパ様細胞と細網細胞に特異反応がみられたが, 皮質のリンパ球は陰性であった。検索した10例中8例のリンパ節および5例の脾臓に少数の陽性細胞が認められた。
  • 藤瀬 浩, 横山 英子, 小林 好作, 石橋 正彦
    1987 年 49 巻 2 号 p. 379-381
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    先天性脊椎形成不全症ならびに血漿中に小腸アルカリフォスファターゼ (AIP) アイソザイム欠損を特微とする, ISラットの各組織AIPの生理化学的性質を, 対照ラットと比較検討した。熱安定性, 阻害剤感受性, 至適pHならびにKm値をホスホエタノールアミンを基質として測定したところ, 小腸, 肝, 腎, 骨AIPの間では差を認めたが, 同一臓器についてはISラットと対照ラットの間に差はなかった。
  • 岩田 祐之, 小野 憲一郎, 長谷川 篤彦, 友田 勇
    1987 年 49 巻 2 号 p. 383-386
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    DEAEおよびCMセルロースカラムクロマトグラフィーを用いて牛血清からα1酸性糖蛋白を分離した。この蛋白は分子量31,000~40,000, 沈降係数 (S20) 2.5で, 等電点分画法によりpI3.5~4.0に6本の多形成分を認めた。アミノ酸分析ではグルタミン酸, リジン, アスパラギン酸が高値であった。糖含量は約40%で, シアル酸含量が高値を示し, 0.6Mスルホサリチル酸や20%トリクロロ酢酸に対し高い可溶性を示した。
  • 岩下 修, 原澤 亮
    1987 年 49 巻 2 号 p. 387-389
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウマ動脈炎ウイルスからオリゴ (dT) セルロースを用いてポリ (A) を持つ48SのゲノムRNAを抽出し, ウサギ網状赤血球ライセート内で翻訳させた。合成された[35S]メチオニン標識産物をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動し, フルオログラフィーを行った結果, 48S RNAは分子量58K, 28K, 26Kの三種のポリプチドをコードすることが明らかにされた。
  • 田原 秀樹, 小川 博之, 大塚 宏光, 伊藤 勝昭
    1987 年 49 巻 2 号 p. 391-394
    発行日: 1987/04/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    脊髄イヌに神経遮断薬アトロピン, C6, プラゾシンおよびヨヒンビンを投与し, キシラジンの循環器系に及ぼす効果とその作用機序を検討した。キシラジンによる持続性血圧上昇は末梢血管のα2受容体を介するものであり, 徐脈と洞性不整脈は中枢神経 (脊髄を除く) もしくは神経節より上位の副交感神経に存在するα2受容体の活性化によることが示唆された。
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