抄録
肺動脈から犬糸状虫の移動をひきおこす血流動態の変化を検討する目的で, 全身麻酔下の犬糸状虫寄生犬にmilbemycin D (Milbe) を投与した後, 右心室圧, 肺動脈圧及び右心拍出量を測定した。Milbe投与50~100分後, 6例中4例において, 糸状虫は肺動脈から三尖弁口部及び右心房に移動した。Milbe投与後, 心拍数は一時的に増加したが, その後除々に減少した。糸状虫移動例では, 収縮期右心室圧と平均肺動脈圧は一定の変化を示さなかったが, 右心拍出量は糸状虫移動前に明瞭に減少した。1回拍出量 (右心拍出量/心拍数), 心指数 (右心拍出量/体重)及び拍出量指数 (1回拍出量/体重) も糸状虫移動例では減少した。肺動脈から右心房方向への糸状虫の移動には, 右心系の血流量と血流速度の低下が関与するように推察された。