抄録
1984年に新潟県下と山形県下の養豚場で呼吸器症状を呈し,やや衰弱した3~4か月齢豚の気道から細胞変性を示すagentを2株分離した. 分離株は豚腎培養細胞のほか,牛・犬・猫・猿の腎培養細胞で,細胞変性を伴ってよく増殖し,継代され,かつ,ヒトO型血球と豚赤血球を凝集した. 分離株はIUdRにより増殖を阻害されず,エーテル,クロロホルム,酸(pH3.0)に耐性で,100nmフィルターを僅かに通過したが,50nmフィルターは通過しなかった.電子顕微鏡観察により,直径約,70~80nmのレオウイルス様粒子を認め,交差中和試験により1型と強い交差を示した. 分離ウイルスを3か月齢仔豚と初乳未摂取の10日齢仔豚に経鼻と経口接種したところ,くしゃみや鼻漏など軽い呼吸器症状を示した. 抗体分布調査では,3~4か月齢での陽性率上昇傾向がみられ,1型が2型と3型よりも平均抗体価およぼ陽性率ともにいちしるしく高かった.