抄録
Eimeria maximaが感染した鶏の腸管におけるサルモネラの侵入の様相を調べた. E. maxima感染鶏および非感染鶏を麻酔し,小腸中央部に設けたループにSalmonella serovar typhimurium(S. typhimurium)1.6-4.0x105CFUを注入し,血中,脾,肝への移行を検査した. 各材料からのS. typhimuriumの検出率は非感染対照鶏の小腸ループの場合よりも高く,とくにE. maxima投与後10日の脾で著明であった. 一方,コクシジウムに感染していない鶏の小腸ループあるいは結紮した盲腸にS. typhimuriumを注入した場介の菌の移行は,小腸ループの方が高く,脾での検出頻度には有意差がみられた. つぎに,E. maxima投与後10日の鶏の小腸ループに,S. typhimurium 1.8-8.4x107CFU を注入して経時的に心血,脾,肝での菌数を測定した. 脾の菌数は,E. maxima感染鶏,非感染鶏ともに肝や血中よりも高く,注入後3時間まで平均約102/gの菌数を示した. 肝では,注入後30分にE. maxima感染鶏に比べて有意に高い菌数を示した. 心血では,E. maxima感染鶏から少ないながら菌が検出されたが,非感染鶏では注入後2時間まで検出されなかった. 以上の成績から,鶏では結紮した盲腸よりも小腸ループからの方がサルモネラは浸入しやすく,E. maxima感染はこれを助長することがわかった.