日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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片側性陰睾犬における下降側精巣摘出と陰嚢内固定手術後の造精機能および受精能について
河上 栄一筒井 敏彦山田 陽一小笠 晃山内 亮
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1988 年 50 巻 3 号 p. 754-762

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抄録

片側性陰睾の成犬5頭および未成熟犬2頭について, 下降側精巣摘出と陰嚢内固定手術を実施後, 2, 4または8週間隔で精巣バイオプシーおよび末梢血・精巣静脈血を採取した. 精巣組織については, PAS-ヘマトキシリン染色を施して観察し, 血液中テストステロン値はRIA法により測定した. 未成熟犬については, 1週間隔で精液性状検査を行うとともに, 人工授精による受胎試験を実施した. 手術時における陰睾側精巣の精細管内には, 精子細胞および精子は認められなかったが, 未成熟犬, 成犬それぞれ陰嚢内固定手術後8, 10週で少数の精子が発現し, その後精細管内の精細胞数, 精子数は著しく増加して, 精細管径も増大した. 未成熟犬, 成犬ともに末梢血および陰睾側精巣静脈血中テストステロン値は, 陰嚢内固定手術後除々に増加した. 未成熟犬では, 術後8週で初めて射精精液中に精子が出現した後, 精液量, 精子数ともに増加し, 精子奇形率はやや高値を示したが, 術後25週以後の精液性状は良好であった. これら陰睾犬2頭の精液をそれぞれ人工授精した雌犬8頭中2頭および3頭中1頭が妊娠し, 産子数はそれぞれ2, 2および8頭であった. 以上の成績から, 犬では陰嚢内固定手術により, 陰睾側精巣自身の能力で造精機能が発現し, その精子は受精能を保有しているが, その受胎率は正常より低いことが判明した.

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