日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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歯周疾患に羅患した雑種およびビーグル犬の口腔細菌叢
磯貝 恵美子磯貝 浩三浦 宏子高野 一雄青井 陽林 正信波岡 茂雄
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1989 年 51 巻 1 号 p. 110-118

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抄録
歯周疾患に羅患した雑種およびビーグル成犬の歯垢細菌叢を調べた.上顎小臼歯部から歯垢を採取し種々の培地で培養した.すべての犬の細菌叢は主として偏性嫌気性グラム陰性桿菌によって構成されていた.カタラーゼ陽性のBacteroides asaccharolyticusは雑種犬で最も高い割合を示した.ビーグル犬ではB. asaccharolyticusに比べてFusobacterium nucleatumの方が高い割合を示した.歯周疾患の発症にともないB. asaccharolyticusなどの偏性嫌気性グラム陰性桿菌が増加し,Streptococcus, Enterococcus および Staphylococcusは減少した.唾液細菌叢は歯周疾患の有無に関係なく,歯垢細菌叢とは異なっていた.健康な歯肉を持つビーグル犬の唾液細菌叢は雑種犬のそれとは異なっていた.Enterococcus, Lactobacillus, Eubacterium,黒色集落形成性Bacteroidesは雑種犬に比較してビーグル犬で高い割合であった.一方,Fusobacterium, Enterobacteriaceae,酵母および真菌は低い割合であった.これらの結果からB. asaccharolyticusおよびF. nucleatumは犬における歯周疾患のcommon pathogenであり,歯肉の炎症の進行に深く関与することが明らかとなった.
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