日本的経営が経営学の世界で議論に上ったのは第二次世界大戦後,しかも1950年代であった。それは日本企業が漸く戦後復興を遂げ,外国から注目されはじめた頃であった。それ以来,日本経済や企業の発展過程で時と共に,環境変化の中で,日本的経営概念は,当初の終身雇用,年功制,企業内組合,集団主義,企業内福祉制度,経営家族主義,人間主義などという内包から常に外延(射程)を拡大してきた。そのことは日本的経営研究の方法についても,反省を迫っている。日本的経営は(一般経営学のアメリカ経営学派,ドイツ経営学派と並ぶ),一般経営学の日本経営学派であるとする藻利重隆の所説に立ち返って,日本的経営概念を当初の狭い外延の議論から,もっと広範囲の経営分野に及ぶ広義の日本的経営論に転換しなければならない。日本的経営学は,①一般経営学的内容と②日本的に特殊な内容の2つを一体的に内包する学問である。本稿では,そのことを具体的に述べようとした。