抄録
発情期を初期・中期・末期の3つに区分し,各々に片側子宮瘻を作った犬を用いて,自然交配,自然位の人工授精,逆立による人工授精を各々行い,その授精方法の違いによる精子の子宮瘻断端部への到達時間と受胎性について調べた.実験犬は5頭で,計8回の発情期について試験した結果,精子の到達時間は発情の初期と中期ではぼ同じで,自然交配と逆立による人工授精で30秒~1分,自然位の人工授精では2分までに半数例に精子が認められた.末期では,どの方法を用いても,ほとんどの例で精子は認められなかった.なお,実験犬中5例が妊娠,3例が不妊で,妊娠したものは全例,子宮瘻側の子宮角にも着床が認められた.