日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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51 巻, 3 号
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  • 加茂前 秀夫, 金田 義宏, 百目鬼 郁男, 中原 達夫
    1989 年 51 巻 3 号 p. 467-473
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    卵巣静止の牛13例に人絨毛性性腺刺激ホルモン(hGC)750~6,000IU, 5例に妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG) 1,000~2,000IUをそれぞれ筋肉内に1回注射し,末梢血液中の黄体形成ホルモン(LH)の推移および発情と排卵の状況を調べた.hCG処置後,血中LHは処置時の値(0.2~0.6ng/ml)より幾分増加(0.3~1.9ng/ml)して排卵まで推移したが,排卵性LH放出はみられなかった.排卵は処置後36時間前後に12例で誘起されたが,いずれも無発情排卵であった.PMSG処置後,血中LHは処置時の値(0.6ng/ml)より幾分増加(1.3ng/ml)して推移した後,4例において39時間前後に明瞭な排卵性LH放出(32ng/ml前後)を示した.排卵は処置後74時間前後に全例で誘起された.誘起排卵に先だって4例で発情が発現したが,排卵性LH放出が確認できなかった1例は鈍性発情であった.これらのことから,卵巣静止の牛において,hCGは排卵性LH放出を惹起することなく排卵を起こすのに対し,PMSGは排卵性LH放出を惹起することにより排卵を起こすことが明らかになった.
  • 武藤 顕一郎, 和栗 秀一
    1989 年 51 巻 3 号 p. 474-484
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    頸殿長6.5mmから頭殿長13.3mmのヤギ胎子11例における胃の初期形態形成について,光学顕微鏡および三次元復構法的に検討した.頸殿長6.5mmないし6.7mm胎子において,食道原基の一部が紡錘形で網嚢腔に囲まれた胃原基の右背方に小嚢状に伸張し,その上皮は単層円柱状でConA III型染色に強く反応した.頸殿長7.3mm胎子において食道の伸張部と食道固有部の間に括れが生じ,前者は前胃原基となって胃原基を囲む網嚢腔の前背側に位置するようになり,その上皮は単層円柱状で,ConA III型染色において胃原基粘膜上皮より強く反応した.頸殿長8.3ないし10.7mm胎子において前胃原基と胃原基は漸次癒合合体し単胃動物の胃原甚と比較すると全体的に偏平で,その小弯部に相当する部が突出する以外はほとんどそれと類似する紡錘型の複胃原基となっていた.複胃原基の全ての上皮はConA III型染色に強く反応した.この複胃原基から,頭殿長12.9mm胎子において第一胃,第三胃,第四胃の各原基が生じ,第二胃原基は頭殿長13.3mm胎子において第一胃と第三胃原基の間に認められた.
  • 小久江 栄一, 下田 実, 鈴木 里江
    1989 年 51 巻 3 号 p. 485-490
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ブタにサルファ剤薬液を経口投与するときの適切な液量について,胃排出速度から検討した.胃排出試験ではフェノールレッドを,血中動態試験ではスルファモノメトキシンのナトリウム塩を,何れも経口補液に溶解あるいは懸濁して自由飲水させた.3つの群を設定した.第一群;5ml/kg液量を,絶食豚に飲ませた.第二群;5ml/kg液量を,採食後のブタに飲ませた.第3群;20ml/kg液量を,採食後のブタに飲ませた.胃排出試験の結果では,第1群の動物は早い胃排出を示した.第2群の動物は,胃排出が遅く,排出時間の変動が大きかった.第3群の動物は,比較的早い胃排出を示し,変動は小さかった.胃排出試験の結果と対応するように,第1群の動物では,サルファ剤投与後のCmaxは高く,急速にtmaxに達した.第2群の動物では,投与後のCmaxは低く,Cmaxに達する時間の変動は大きかった.第3群の動物では,投与後のCmaxは比較的高く,tmaxに達する時間の変動は小さかった.以上から,多量の薬液を飲ませると,薬物療法に好ましい血中動態が得られる.これは薬液の胃排出が早く安定するためと思われる.採食したブタで,経口補液の飲量を調べた結果から,サルファ剤では,20ml/kgが飲水投与に適切な液量と考えた.
  • 清水 高正, 永友 寛司
    1989 年 51 巻 3 号 p. 491-495
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Mycoplasma gallisepticumMR3株のマイクロタイターウェルへの付着と,付着菌体による鶏赤血球の吸着は,共に抗血清により特異的に阻止された.MR3株接種鶏の血清中には,付着・血球吸着阻止(AHAI)抗体の方が付着阻止(ADI)抗体に比べて早期かつ高力価に出現した.野外で本菌に感染した7鶏群由来451例の鶏血清を対象に,HI抗体価とAHAI抗体価を測定したところ,382例(84.7%)については互いに高い相関関係が得られた.他の69検体はHI反応陽性,AHAI反応陰性であった.AHAI試験はごく少量の抗原で実施でき,被検血清の吸収処理や特殊な試薬,器具類を必要とせず,抗M. gallisepticum抗体の検出法として有用と考えられる.
  • 筒井 敏彦, 河上 栄一, 織間 博光, 山内 亮, 大久保 隆行, Stabenfeldt George H.
    1989 年 51 巻 3 号 p. 496-504
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬の黄体機能および妊娠維持におよぼすPGF-analogue (PGF-1052)投与の影響について検討した.実験犬51頭を用い,PGF-1052を1頭当り,黄体期に100-800μg,妊娠期に100-200μgを各々筋肉内1回投与し,その影響を末梢血中progesterone (P)濃度,開腹手術による子宮の所見および流産の有無によって観察した.その結果,黄体期の初期では,投与直後に一時的にPが低下したのみであったが,黄体開花期では,投与量に関係なく,Pは低値を推移した.また,交配後10-15日では,12頭中5頭が妊娠を継続したが,残りは着床直後に胚が死滅した.妊娠25-45日では,投与後3-4日で流産,妊娠55日では投与30-44時間後に早産が認められた.以上のように,犬では,黄体期および妊娠25日以降にPGF-1052を100-200μg投与で,黄体退行,流産,早産を誘起することが認められた.
  • 上田 雄幹, 山崎 省二, 山本 茂貴
    1989 年 51 巻 3 号 p. 505-514
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Mycobacterium avium Flaming 0株をC57BL/6 (B6), BALB/c (B/c)雌6週齢,無菌(GF)ならびにフローラ保有(FB) B/c系ヌード(nu/nu)およびヘテロ(nu/+)マウス雌雄4力月齢に経口胃内投与後,糞便,臓器からの半定量的培養,組織切片による抗酸菌の検出を行い経口感染時の菌の侵入経路,感染菌量,感染の進展について検討した.B6に1081回または分割(107,週2回)投与後,6~8週で感染が成立し,持続的または断続的に糞便中に排菌がみられ,長期間続いた.B6とB/cはほぼ同程度の感受性であった.nu/+GFは同FBに比べ投与量と感染率の関係が明瞭であった.投与後7日まで糞便,腸内容,パイエル板(PP),腸間膜リンパ節(MLN)の菌の推移を調べると,菌は腸管からは急速に減少し,4~7日にPPおよびMLNにごく少数検出された.全身感染の成立をnu/nuとnu/+のGFおよびFBとで病変の形成を調べると,いずれも50週では全身諸臓器に病巣が認められたが,GF,FBともにnu/nuが著しい病変を呈した.経口投与後早期(7日以内)に菌はおそらくPPに捕捉され,ついでMLNに持続感染するものと思われた.感染がMLNに限局する機序には胸腺が関与する免疫機構の役割が示唆された.
  • 竹村 直行, 藤井 忠之, 小山 秀一, 左向 敏紀, 鈴木 勝士, 内野 富弥, 本好 茂一
    1989 年 51 巻 3 号 p. 515-520
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    乳牛を用いて,硫酸キニジンの薬物動態学的ならびに,血漿中キニジン濃度の中毒域について検討した.薬物動態学的解析は,2区画モデルで行った.その結果,半減期(T1/2β)は1.28±0.492時間と短時間で,個体差が大であった.また,体クリアランスは,58.7±24.49mμmin/kgであったが,腎臓に於けるキニジンのクリアランスは0.76±0.44ml/min/kgであった.以上のことから,経口投与ないしは単回静脈内投与では,血漿中キニジン濃度を有効濃度内に保つことが困難であると推察された.また,キニジンの排泄臓器としては,腎臓以外の臓器が深く関与しているものと考えられた.心房細動ないしは心室性期外収縮のウシに対しキニジンを経口投与したところ,除細動時の血漿中キニジン濃度は2.3±1.59mg/l(n=3)であった.
  • 中井 雅晶, 橋本 善春, 北川 浩, 昆 泰寛, 杉村 誠
    1989 年 51 巻 3 号 p. 521-529
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ニワトリの精管結紮が精巣上体に及ぼす影響および貯留精子の排除機構について,組織学的,組織化学的お上び免疫組織化学的に検討した.結紮1週後には精巣網お上び精巣輸出管の管腔内に高密度に精子が充満し,精子の凝集,大食細胞集塊および異物巨細胞がみられた.上皮の一部は剥離し,管腔内に多数の線維芽細胞および偽好酸球が滲出していた.精巣網と精巣輸出管の上皮は多数の精子を含み,間質内には多数のリンパ球と形質細胞が認められた.4週後には大型の精子凝集塊,泡沫細胞集塊および間質結合組織の管腔内への増殖がみられた.8週後では管胎内に泡沫細胞集塊が顕著であった.結合小管と精巣上体管では著しい変化はみられなかった.結紮後,精巣輸出管の酸性フォスファターゼ活性は減弱したが,他部では変化を認めなかった.また,間質中の形質細胞はIgGを含んでいた.以上の成績から,ニワトリでは精管結紮によって,精巣網および精巣輸出管に肉芽腫が形成されることが明らかになった.また,貯留精子の排除は上皮細胞,大食細胞および肉芽腫によっておこなわれ,その排除過程に抗体の関与する可能性が想定された.
  • 加藤 一典, 森 九重, 加藤 憲夫
    1989 年 51 巻 3 号 p. 530-539
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    牛の正常乳と乳房炎乳では,乳酸脱水素酵素(LDH)アイソザイムパターンが異なることが知られている.パターン変化の由来を知るため,LDHアイソザイムを指標とした乳房炎乳の分類,及び白血球のLDHアイソザイムパターンについて調べた.乳房炎乳はA (LDH1,2が多くLDH3-5が少ない)とB (LDH1が減少しLDH2-5が増加する)の2つに大別された.白血球のアイソザイムを調べたところ,顆粒球のパターンは乳房炎乳A,リンパ球はBにそれぞれ良く似ていた.さらに乳房炎乳Aより顆粒球,Bよりリンパ球のマーカータンパク質が検出された.以上の結果は,顆粒球,リンパ球が,乳房炎乳のアイソザイムパターンの変化に寄与していることを示唆している.
  • 早崎 峯夫, 大石 勇
    1989 年 51 巻 3 号 p. 540-546
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    寄生虫由来抗原物質による免疫処置が犬糸状虫の感染に与える影響について検討した.実験群は免疫群2群と感染対照群1群の3群である.免疫処置は,糸犬状虫成虫のPBS抽出抗原と水酸化アラムゲルの混合液の,注射(第一群),生きたMetastrongylus apri感染幼虫の経口投与(第二群)によった.これら2群はともに免疫処置により犬糸状虫特異間接赤血球凝集抗体の産生がみられ,犬糸状虫とM. apriの間に交差反応の存在することが示唆された.第二群では,受身皮膚アナフィラキシー抗体の産生が,対照群より約70日遅延してみられた.実験犬を安楽死処置後,右心室・肺動脈より虫体を回収し,虫体数,体長について計測した.その結果,対照群と比較して,第一群では虫数多く,体長長く,同種抗原による免疫処置が幼虫の発育に有利に作用したことが示唆された.また第二群では虫数少なく,体長短く,交差反応性を有する異種抗原が感染幼虫の発育に不利に作用したことが示唆された.
  • 宇塚 雄次, 土井 章三, 徳力 幹彦, 松本 治康
    1989 年 51 巻 3 号 p. 547-553
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    獣医学における視覚障害の客観的評価を行うための基準の一助として,猫において視覚誘発電位(VEP)の基本的波形の確立を試みた.1) VEPの記録部位について検討したところ,最も大きな反応が得られた部位は後頭部領域の傍正中であった.2) 猫のVEPは閃光刺激後100msec以内に3種の波形成分(P1, N1, P2)がみられた.3) 閃光強度によるVEP波形の変化について検討したところ,閃光強度の増加に伴い各成分の潜時は減少し,振幅は増大する傾向がみられたが,閃光強度0.6Jにおいて飽和傾向が認められた.4) 麻酔後の時間経過に伴うVEP波形の変動について調べたが,潜時はほとんど変化無く,振幅は個体間,個体内ともバラつきが大きく,特定の傾向はみられなかった.
  • 鈴木 達行, 酒井 豊, 石田 隆志, 松田 修一, 三浦 秀夫, 伊藤 一伸
    1989 年 51 巻 3 号 p. 554-559
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    福島種畜牧場の平地に在る牛舎(群-1),同山地に在る牛舎(群-2)および酪農家の牛舎(群-3)繁養のホルスタイン種またはホルスタイン交雑種未経産牛の129頭について,黒毛和種由来の凍結受精卵(胚)の2個または分離卵(胚)を片側子宮角へ非手術的に移植して双子作出を試みた.その結果97頭(75%)が受精後35~60日に行った直腸検査によって妊娠と診断された.これまでに分娩した86頭中37頭(43%)が双子,49頭(57%)が単子であった.群-1の受胎率63%は群-2および群-3のそれぞれ88%と78%に比べて低かった.群-3での流産と死産率は8%と6%となり,群-1と群-2のそれぞれ12%と16%,18%と24%にくらべて有意に低かった(P<0.05)双子の生時体重は単子に比べて軽量であった(P<0.05)が,生後270~330日後には両者の体重に有意差が認められなかった.双子分娩例での難産は認められなかったが,後産停滞は双子で高く17%,単子で3%であった.また双子の妊娠期間は単子に比べて5日間短かかった(P<0.05).分娩後次の妊娠までに要した期間は双子分娩例で95日,単子分娩例で87日となり,前者で長かった.
  • 筒井 敏彦, 河上 栄一, 村尾 育子, 小笠 晃
    1989 年 51 巻 3 号 p. 560-565
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    発情期を初期・中期・末期の3つに区分し,各々に片側子宮瘻を作った犬を用いて,自然交配,自然位の人工授精,逆立による人工授精を各々行い,その授精方法の違いによる精子の子宮瘻断端部への到達時間と受胎性について調べた.実験犬は5頭で,計8回の発情期について試験した結果,精子の到達時間は発情の初期と中期ではぼ同じで,自然交配と逆立による人工授精で30秒~1分,自然位の人工授精では2分までに半数例に精子が認められた.末期では,どの方法を用いても,ほとんどの例で精子は認められなかった.なお,実験犬中5例が妊娠,3例が不妊で,妊娠したものは全例,子宮瘻側の子宮角にも着床が認められた.
  • 萬場 光一, 谷口 和之, 利部 聰, 牧田 登之
    1989 年 51 巻 3 号 p. 566-573
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    亜鉛欠乏飼料を妊娠ラットに与えて,その肝臓,腎臓,脾臓,膵臓,および十二指腸の微量金属(亜鉛,鉄,銅,マンガン)の定量をおこない,代謝の中心的存在である肝臓の形態学的変化を検討した.その結果,亜鉛欠乏飼料飼育妊娠17および20日目のラットの各臓器内金属含有量の変化は,亜鉛は脾臓と十二指腸では低値を示したが,他の臓器では変化が認められなかった.銅,マンガンは各種臓器に有意差を示さなかった.しかし,亜鉛欠乏が鉄代謝に及ぼす影響は大で,欠乏飼科飼育の妊娠ラットのほとんどの臓器に高い鉄含有量がみられた.特に肝臓に鉄の異常増加が見られた.光顕的に肝臓ではベルリン青やターンブル青染色により,小葉間結合織の周囲の肝細胞に鉄の強い陽性反応が観察された.また,肝臓の電顕像では,グリコーゲンの減少や大小さまざまな,電子密度の異なる多数のライソゾームや脂肪様顆粒が観察された.これらのことから妊娠のラットの亜鉛欠乏はラットの飢餓状態をまねき,ヘモグロビンと鉄の結合を阻害することにより血清鉄を増加させ,肝臓と各種臓器における鉄の異常増加をもたらし,それらが肝臓の超微構造に変化を与えたものと考えられた.以上の所見より,亜鉛欠乏は各種臓器に鉄の増加を招来し,この亜鉛と鉄の間に強い関係のあることが示唆された.
  • 松井 寛二, 菅野 茂
    1989 年 51 巻 3 号 p. 574-581
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    心拍メモリー装置を用いて,成熟シバヤギの連続する2047個のR-R間隔(R-R)を10 msec単位で計測し,そのうち安定した連続する100個のR-Rのダイヤグラムと平均値および標準偏差を計算した.R-Rの変動が家畜において自律神経活動を知るための指標として有用であるかどうかについて検討した.R-Rの変動には,概ね周期性がみられ,特に安静時の変動幅は大きかった.アトロピン単独ならびにアトロピンとプロプラノロール同時投与後あるいは採食時には,R-Rの平均値の明らかな低下と周期的な変動の消失がみられた.プロプラノロール投与後には,R-Rの平均値が上昇するとともに周期的変動の振幅が増大した.また安静時のR-Rの変動と呼吸曲線の周期性はよく対応していた.R-Rの平均値と標準偏差との間には有意な正の相関関係がみられ,R-R変動が自律神経活動の指標となりうることが明らかにされた.R-R計測が無拘末で家畜の自律神経活動を推測する有効な手段であることが示唆された.
  • 玄 順浩, 阪口 玄二
    1989 年 51 巻 3 号 p. 582-586
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    C型ボツリヌス菌芽胞(1羽当たり1×107個)を経口投与すると,食糞を可能にしたニワトリは発症,死亡したが,食糞を不可能にしたニワトリは発症しなかった.食糞可能群,不可能群とも,芽胞投与後数日間,盲腸糞にC1毒素の排泄がみられた.また,食糞可能群の発症鶏,無発症鶏とも,血中毒素が検出されたが,食糞不可能群からは検出されなかった.以上の結果から,ニワトリに経口投与されたC型ボツリヌス菌芽胞は,消化管(盲腸)内で発芽,増殖すると共に毒素を産生し,盲腸糞に一旦排泄されたのち,菌体と共に再摂取され,毒素(C1L毒素)は腺胃内で菌体と結合して安定化され,上部小腸から吸収され,ニワトリを発症させたと考えられる.このように,食糞は,ニワトリ・ボツリヌス症発病に重要な役割を果たすと考えられる.
  • 山手 丈至, 田島 正典, 渋谷 一元, 伊原 三重子, 工藤 悟
    1989 年 51 巻 3 号 p. 587-596
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    15力月齢雄Fischer 344ラットの頭部の皮下組織に悪性線維性組織球腫(MFH)が自然発生した.この腫瘍は同種ラットにおいて45代まで継続的に移植され,MFH-MTと命名された.光学顕微鏡及び電子顕微鏡検索により起原及び継代移植腫瘍はstoriform状に配列する線維芽細胞様細胞及び組織球様細胞の混在から成っていた.腫瘍細胞は酸性フォスファターゼ,アルカリフォスファターゼ,非特異的エステラーゼ,alpha-1 antitrypsin及びlysozymeに対し陽性反応を示した.肺及び尾の皮膚組織に移植されたMFH-MTはstoriform, pleomorphic, myxoid及びgiant cell型の混在した組織様式を有し,さらに硬化性血管腫様及び骨肉腫様構造も認められた.MFH-MTは無胸腺ヌードマウスにおいて,alpha-1 anti-trypsinに強染する多形性細胞の腫瘍性増殖を示し,よく発育した.2種の抗腫瘍剤投与によりMFH-MTの増殖は有意に抑制され,抑制された腫瘍は,主に線維芽細胞様細胞及び豊富なコラーゲン線維から成ったが,組織球様細胞の出現数は減少した.
  • 磯貝 恵美子, 磯貝 浩, 小沼 操, 水越 紀子, 林 正信, 波岡 茂郎
    1989 年 51 巻 3 号 p. 597-606
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    パルボウイルス感染症と診断された雑種犬3症例において大腸菌血症とそれに伴うエンドトキシン血症が認められた.エンドトキシンの血漿中でのレベルは臨床例で46.5pg/mlであった.一方,健康な犬では2.3pg/mlであった.臨床例の糞便フローラは乱れ,大腸菌が主要な細菌となっていた.大腸菌の一部は血液から分離された菌と血清学的に同一であった.これらの大腸菌はSTやLTの様な毒素を産生しなかった.病現組織学的検索では小腸上皮の変性および壊死を認めた.小腸上皮細胞にはウイルス封入体を多数認めた.小腸粘膜下の血管内およびその周囲には好中球や形質細胞の浸潤をともなう水種およびフィブリン様物質の浸出を認めた.肝臓をはじめとする種々の臓器には好中球浸潤と播種性血管内凝固像が観察された.パルボウイルス実験感染犬は同ウイルス感染に特徴的な臨床症状を示し,糞便中にウイルスを排出した.これらの犬の血漿中のエンドトキシンレベルは感染にともない次第に上昇し,10-30日にわたり高いレベルを持続した.最も高いレベルを示した時点の血漿中の平均エンドトキシン量は73.6pg/mlであった.これらの結果は腸内フローラがCPV感染において重要な役割を演じていること,およびエンドトキシンが感染後の病状悪化因子のひとつであることを示している.
  • 堀本 泰介, 笠岡 達彦, 土屋 耕太郎, 高橋 英司
    1989 年 51 巻 3 号 p. 607-612
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)感染fcwf-4細胞より界面活性剤を用いて可溶化した粗HA素を,3種のクロマトグラフィーを用い部分精製した.レクチンアフィニティークロマトグラフィーでは,コンカナバリンAに結合した後α-メチルD-マンノシドにより溶出された分画にHA性が見い出され,HA素には糖蛋白が含まれることが考えられた.イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過もまた界面活性剤可溶化粗HA素の精製には有効であった.これら3種のクロマトグラフィーより得た各HA分画をSDS-PAGEを用いて分析した結果,ゲル濾過が最も効果的な精製法であると考えられた.またSDS-PAGE分析では,各部分精製HA素に共通に59,000の分子量を示す蛋白バンドが銀染色で認められた.さらに,この蛋白はイムノブロット分析において猫の感染血清と強い反応性を示した.これらの結果は,FHV-1感染fcwf-4細胞からの界面活性剤可溶化HA素は分子量59,000の免疫原性糖蛋白に関連することを示唆する.
  • 筒井 敏彦, 天野 正, 清水 敏光, 村尾 育子, Stabenfeldt George H.
    1989 年 51 巻 3 号 p. 613-617
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    猫胚の子宮内移送の発現状況を明らかにするため,妊娠子宮169個の黄体数,胎子数を観察し,次の結果を得た.1頭あたりの黄体数は2-11個,平均5.6±1.9(SD)個で,左右卵巣の黄体数の間には負の相関関係が認められた(P<0.05).また胎子数は1-8頭,平均4.5±1.4頭で,左右子宮角内の胎子数の間には相関関係は認められなかった.着床率は25-100%で平均83.9±19.5%であった.胚の子宮内移送は69頭(40.8%)に認められ,1頭あたり移送胚は1-3個であった.黄体数の多い側の子宮角から少ない側への移送が66頭(95.7%),少ない側から多い側への移送が1頭(1.4%),左右黄体数の等しい例での移送は2頭(2.9%)であった.移送の結果,左右黄体数の差よりも左右子宮角内の胎子数の差が小さくなったものが54頭(78.3%),変らなかったものが8頭(11.6%),逆に多くなったものが7頭(10.1%)であった.このことから猫においても胚の子宮内移送によって,左右子宮角内の胎子数が均等化することが認められた.
  • 大竹 修, 其田 三夫, 松川 清, 福本 真一郎, 高橋 清志, 黒沢 隆
    1989 年 51 巻 3 号 p. 618-620
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    岡山県に発生した秋期結膜炎の79例について臨床学的,寄生虫学的,および病理組織学的に検索した.その結果,本症はSetaria digitataの幼若虫が結膜内に迷入して,局所性のアレルギー反応を起こすことに起因していることが判明した.治療には局所の乱刺と副腎皮質ホルモンの塗擦または同剤の結膜内注射および腫大した病変部の外科的切除が有効であった.
  • 田島 誉士, 荒磯 恒久, 小山 富康, 藤永 徹, 大友 勘十郎, 小池 寿男
    1989 年 51 巻 3 号 p. 621-623
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウマ,ウシおよびイヌの末梢血リンパ球(PBL)のコンカナバリンA (ConA)刺激による膜流動性の変化を,蛍光偏光解消法および電子スピン共鳴法により観察した.ConA刺激により,3種の動物のPBLのわずかな膜流動性の変化が観察されたが,それらの変化は未刺激PBLにおいても観察される程度の変化であった.したがって,少なくともウマ,ウシおよびイヌPBLのConA刺激後の反応は,膜(リン脂質二重層)流動性の変化を伴っていないことが示唆された.
  • 河野 潤一, 石丸 司, 清水 晃, 木村 重
    1989 年 51 巻 3 号 p. 624-626
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    日本産肝蛭メタセルカリアから人工的に脱嚢させた幼肝蛭を,それぞれ50%牛胎児血清を添加したRPMI1640,Eagle's MEMおよびMedium199の3種の培地を用い,37℃,5%CO2下で培養した.幼肝蛭はRPMI1640を基礎培地としたもので最も良く培養され,培養12日における生存率は79.2%と高率であり,平均生存日数は16.3日,最長40日まで生存した.
  • 小笠 晃, 宮嶋 寛, 岩村 祥吉, 百目鬼 郁男, 河上 栄一, 筒井 敏彦
    1989 年 51 巻 3 号 p. 627-629
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    豚の周排卵期における高温高湿度が,卵巣機能に及ぼす影響について検討するため,一定の時間人工気象室内で高温高湿度に曝された1頭の雌豚の発情発現および排卵と末梢血中性ホルモンの動態を調査した.その結果,豚は微弱発情を示し黄体共存型の単胞性嚢腫を呈した.血中estrogen値は明瞭なピークを示さず低値で推移し,LHも短時間の小ピークが認められたに過ぎなかった.このことから高温高湿度の感作をうけた雌豚はgonadotrophinの分泌減少を招き,卵巣機能の異常を誘起させるものと考察された.
  • 亘 敏広, 後飯塚 僚, 小山 秀一, 左向 敏紀, 内野 富弥, 荒木 誠一, 長谷川 篤彦, 本好 茂一
    1989 年 51 巻 3 号 p. 630-631
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    健常豚にDHPを投与した後,気管支肺胞洗浄を実施した.回収された肺胞マクロファージの細胞数及び構成比にはDHP投与による差は認められなかったが,NBT還元能においてDHP投与群では対照群と比較して有意な高値を認めた.
  • Sailasuta Achariya, 立山 晉, 山口 良二, 野坂 大, 大塚 宏光
    1989 年 51 巻 3 号 p. 632-633
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    4歳,雌,ヨークシャーテリア犬が三ヶ月前より腹囲膨満の症状を呈し,試験的開腹の結果直径8cmの腫痛を卵管釆に付着して認めた.組織学的検索の結果,本腫痛は巣層の円柱上皮が腺腫状に配列した乳頭腫の形態を示した.
  • 小峯 健一, 大田 博昭, 鎌田 信一, 内田 和夫, 平井 克哉
    1989 年 51 巻 3 号 p. 634-635
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    IBDV・J1株を,IBDVに対する移行抗体保有1日齢ヒナ血清で中和した.この中和ウイルスを,3週齢のSPFヒナの脾細胞より調整したガラスデッシュ付着細胞,リンパ球,鶏胚線維芽細胞およびニワトリ腫瘍株化細胞(LSCC-1104-X-5, LSCC-1104-B-1細胞)にそれぞれ接種し,その増殖を調べたところ,ウイルスの増殖はガラスデッシュ付着細胞でのみ認められた.この結果から,マクロファージ様細胞では中和されたウイルスが,IBDV特異レセプターを介さずに感染する事が示唆された.
  • 福田 俊, 川島 直行, 飯田 治三, 青木 純二, 鴇田 和実
    1989 年 51 巻 3 号 p. 636-641
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ビーグル犬の血液学および血液生化学値の加齢性変化を,1~14歳齢の雌雄244頭から得られた延べ2353検体のデータを用いて検討した結果,8~12歳以降,赤血球数,ヘマトクリット値,ヘモグロビン量,白血球数およびCreatinine値は減少を,総蛋白量およびALP値は増加を示した.平均赤血球容積,平均赤血球血色素量および平均赤血球血色素濃度,血糖,BUN,GOTおよびGPT値は変化しなかった.
  • 西田 利穂, 浅利 昌男, 大重 英敏, 松下 博治, 鹿野 胖
    1989 年 51 巻 3 号 p. 642-645
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    免疫組織化学的手法を用いてサルの膵臓における炭酸脱水酵素アイソザイム(CA-III)の局在を観察した.CA-IIIは小葉間導管の上皮細胞と膵島のA細胞に特異的に局在していた.
  • 織間 博光, 野藤 明仁, 小泉 正, 鷲巣 誠, 多川 政弘, 清水 幹子, 藤田 道郎, 手塚 泰文
    1989 年 51 巻 3 号 p. 646-648
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    麻酔下の犬に高頻度ジェットベンチレーションを実施し呼吸回数と動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)の関係を検討した.その結果,低駆動圧状態では従来から知られている,呼吸回数の上昇に伴いPaCO2が上昇するという傾向は不明瞭となり,約120回/分の呼吸回数でPaCO2が低下する傾向が認められた.この現象は高頻度人工呼吸法の犬での最適呼吸回数を設定する上で重要な知見であると考えられた.
  • 望月 雅美, 川路 郁代, 小川 博之, 阿久沢 正夫
    1989 年 51 巻 3 号 p. 649-651
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1982年から1988年にわたって収集した182例のネコ血清中の抗ネコ巨細胞形成ウイルス抗体を微量免疫拡散法で検査した結果,健康ネコ群が4.8%であったのに対し,疾病ネコ群は18.3%の有意差のある陽性率を示し,全体では13.7%の抗体陽性率(感染率)であった.ネコ白血病ウイルスとの混合感染ネコの割合が有意に高かった以外には,特別な疾病との関連は認められなかった.
  • 今川 浩, 松村 富夫, 鎌田 正信, 福永 昌夫, 長谷川 斐子, 大石 秀夫, 松本 稔
    1989 年 51 巻 3 号 p. 652-655
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    北海道の軽種馬繁殖牧場において,6株のレオウイルスが健康な子馬の糞便と溶連菌によると思われる腹膜炎で死亡した子馬のリンパ節から,RK-13細胞,MA-104細胞あるいはVero細胞で分離された.分離株は培養細胞において好酸性の細胞質内封入体をつくり,そのウイルス粒子の直径は約85nmで,二重殻構造を有しており,内部に直径約45nmのコアを持っていた.分離株は間接蛮光抗体法によってレオウイルスと同定され,さらに赤血球凝集抑制反応によりレオウイルス3型と同定された.
  • 小野 憲一郎, 乾 健二郎, 長谷川 貴史, 渡邊 博正, 高木 茂美, 長谷川 篤彦, 友田 勇
    1989 年 51 巻 3 号 p. 656-658
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    競走馬20例(3歳齢8例,4歳齢6例,5歳齢6例)について赤血球内スーパーオキシドジスムターゼ,グルタチオンペルオキシダーゼ,カタラーゼ活性を測定した.各酵素活性値の平均±標準偏差はそれぞれ2.9±0.3×103IU/gHb,72±8IU/gHb,40±7×103IU/gHbで,年齢による差は認められなかった.
  • 関崎 勉, 野々村 勲, 今田 由美子
    1989 年 51 巻 3 号 p. 659-661
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    実験感染で鶏への病原性が明らかな,野外分離株の病原性大腸菌について,その保有プラスミドと病原性を調べた.野外株,PDI-386に対し,95キロベースのプラスミドを脱落させた派生株,TS23,は,静脈内接種では鶏に対し親株と同程度の致死毒性を示したが,気嚢内接種での致死毒性は低下した.
  • 望月 雅美, 堤 ルリ子, 原澤 亮
    1989 年 51 巻 3 号 p. 662-664
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ネコ糞便内に検出されたロタウイルスの性状を糞便抽出液を材料として検討した.経口投与後ネコはほとんど消化器症状を呈さず,約1週間,糞便にウイルスを排泄し,血中抗体価の上昇が認められた.このネコ由来株はロタウイルス特有の"long"タイプのRNA分節泳動像を示した.ヒトロタウイルスI~IV血清型株のうちIII型株とイヌロタウイルスRS 15株だけが,糞便抽出液経口投与家兎免疫血清で中和された.
  • 平野 紀夫, 小野 勝彦, 松本 稔
    1989 年 51 巻 3 号 p. 665-667
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    MHV 11株について理化学性状を比較した.50℃加熱に対してはJHM株の感受性が最も高く,NuU株が最も低かった.熱抵抗性株の多くは弱毒株で,これらの弱毒株がマウスコロニーにおけるMHV感染の蔓延と存続に重要な役割をはたしていることが示唆された.
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