日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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Monosodium aspartate (MSA)投与により誘発されたハタネズミの糖尿病
佐々木 稔新井 敏郎町田 由美大木 与志雄
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1989 年 51 巻 4 号 p. 669-675

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抄録

MSAを新生仔および成熟ハタネズミに皮下投与すると, 投与後3~5時間で視床下部弓状核に核濃縮を伴った神経細胞の変性像が観察された. 新生仔では視床下部腹内側核の一部や大脳皮質, 手網内側核にも同様な変化を認めた. 一方, MSA投与した新生仔ハタネズミを離乳後, 通常に給与している草食動物用ペレットとヘイキューブで飼育すると, 56.7%の動物に高濃度の尿糖が認められた. 軽度糖尿病ハタネズミにおいては, 血糖値は正常値(72.5mg/d)の約2.5倍(180.6mg/dlに, インスリン値は正常値(21.5μU/ml)の約5倍(112.0μU/m)の上昇を示した. 一方, 重度糖尿病動物においては, 血糖値は正常の約4倍(272.6mg/dl)を示したが, インスリン値は正常の約1/2以下(8.0μU/ml)に減少し, 著明なインスリン欠乏状態に陥っていた. 病理組織検索により, 軽度症例では膵島B細胞においてインスリンの盛んな生合成と分泌を示唆する像がみられたが, 重度症例では核の濃縮や消失を伴う細胞質の空胞化が顕著で, インスリン分泌の著しい低下を示す所見が認められた.

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