日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
Print ISSN : 0021-5295
ISSN-L : 0021-5295
非繁殖期の猫におけるFSH製剤による発情誘起について
筒井 敏彦酒井 康宏松井 安弘佐藤 政範山根 一真村尾 育子Stabenfeldt George H.
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 51 巻 4 号 p. 677-683

詳細
抄録

猫の非繁殖期にFSH製剤(FSH-P)で発情誘起を行い, この場合の交配によって受精および妊娠の成立の可能性を検討した. また, 胚移植を前提として, 下行性子宮灌流法によって, 卵回収の可能性も検討した. 実験猫は19頭で, 発情誘起はFSH-Pを初日2mg, 翌日から発情の認められるまで1mgを投与して行った. その結果, 発情は初回投与から3~8日に15/19頭, 89.5%に認められた. また排卵数は17頭のうち16頭に平均7.3±1.3個(S. E.)認められた.交配後6~8日の9頭について, 卵回収を行ったところ, 8頭から1~15個, 平均3.6個回収され, その率は18.2~100%, 平均44.2%であった. 回収卵は5頭が拡張胚盤胞, 3頭が変性卵であった. 残り7頭について, 交配後15~20日に妊娠成立の有無を観察した結果, 2頭に妊娠が認められた. しかし, 各々妊娠24, 27日に流産した. これらのうち5頭について測定した末梢血中progesterone値は, 妊娠の有無にかかわらず早期に急下降し, 黄体の退行が示唆された. 以上のことから, 非繁殖期の猫にFSH-Pで, 発情誘起が可能で, この場合の交配で受精, 受胎することが明らかとなった. しかし, 黄体の退行が早期に起こることから妊娠維持は困難であった.

著者関連情報
© 社団法人 日本獣医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top