日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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犬糸状虫性血色素尿症に関する研究, 実測および算出血清浸透圧ギャップ
北川 均佐々木 栄英石原 勝也
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1989 年 51 巻 4 号 p. 703-710

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抄録
健康ビーグル43頭(対照群)と犬糸状虫性血色素尿症自然例40頭(血色素尿症群)について血清浸透圧を測定するとともに算出浸透圧と浸透圧ギャップを算定した. 対照群では, 血清の実測浸透圧は296±5 mOsm/kg, 算出浸透圧は293±6 mOsm/kg, 浸透圧ギャップは10 mOsm/kg以下であった. 血色素尿症群の実測浸透圧は272から370 mOsm/kgの広い範囲に分布していた. しかし, かなりの例数が激しい血管内溶血にもかかわらず正常範囲内の血清浸透圧を示し, 血清浸透圧の変化は溶血の直接的原因ではなかった. 犬糸状虫摘出手術後死亡した11例の実測浸透圧(331±28 mOsm/kg)は, 回復した29例(302±17 mOsm/kg)より高値であった. 算出浸透圧は回復24例では296±16 mOsm/kg, 死亡18例では304±22 mOsm/kgであった. 摘出後回復した例の浸透圧ギャップは, 正常範囲内に分布する傾向を認めた(5.4±5.9 mOsm/kg)が, 死亡例では正常範囲より高い値を示し(22.7±8.9 mOsm/kg), 浸透圧ギャップは予後を示唆した. 実測浸透圧は, 浸透圧ギャップ, ナトリウム, カリウム, BUN, GOT, GPT, クレアチニン, ビリルビンおよび血漿ヘモグロビン濃度等と有意に相関した. Osmolar gapは, カリウム, BUN, GOT, GPT, クレアチニンおよびビリルビン濃度と有意に相関した. 犬糸状虫摘出20時間後, 血漿ヘモグロビン濃度は著しく下降したが, 血清浸透圧には明瞭な変化がなかった.
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