抄録
と殺豚に, 褐色し脂質含量の増加した肝臓(肝臓変性)がしばしば見られる. 黒っぽく硬く乾いた感じのDFD肉は, 高い最終pHを特徴とし, 品質低下が指摘されている. 肝臓変性とDFD肉の発現要因は, と殺前の豚の消耗疲労という点でよく類似している. そこで, 両者の関連を調査検討した. 正常肝の総脂質量は6.0%以下であった. 正常肝を有すると殺豚では, 枝肉の最終pHは5.7付近まで低下し, 肉色は淡赤色で, と殺後24時間の筋肉組織では筋線維の萎縮が認められた. 肝臓変性肝の総脂質量は6.6%以上であった. 肝臓変性肝を有すると殺豚では, 枝肉は早い死後硬直を示し, ATPの分解を示す筋肉のR値は高かった. この枝肉77例中65例は6.0以上の高い最終pHを示し, 肉色は暗赤色で, 乾いた感じであり, と殺後24時間でも筋線維の萎縮は少なかった. これらのことは, 肝臓変性豚の枝肉には高率にDFD肉が発現することを示している. 53時間の絶食と筋肉運動を実験的に負荷した豚では, 肝臓は褐色し脂質含量は高かった. 枝肉の早い死後硬直と筋肉の高いR値が認められ, 5例中4例にDFD肉が発現した. このことから, と殺前の長時間の絶食やストレスを伴う激しい筋肉運動による消耗疲労は, 肝臓変性とDFD肉の両方を惹起する原因となることが示された.