1990 年 52 巻 6 号 p. 1155-1161
Wolff-Parkinson-White (WPW) 症候群の特徴を示す10歳齢のホルスタイン雌牛に, 心電図, 心音図, 血圧, 心エコー図検査および薬物投与試験を行い詳しく検討した. 心電図では, P波は正常波形時および異常波形時とも同様であった. PR間隔は正常波形時0.2秒であったのに対し異常波形時には0.1秒に短縮した. 一方QRS群持続時間は正常波形時0.1秒であったのが異常波形時には0.12秒に延長した. 心電図上デルタ波は認められなかったが, 心エコー図検査ではB型WPW症候群の特徴と言われているノッチが認められた. また, 異常波形は塩酸プロカインアミド投与により消失した. 以上のことから, この牛の心電図異常波形時における心室の収縮は副伝導路経由の刺激によってのみ惹起されることが強く示唆された.