日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
Print ISSN : 0021-5295
ISSN-L : 0021-5295
食餌性脂肪壊死ラットの脂肪細胞の脂肪合成と脂肪分解に対するイソプロチオランおよびファイトステロールの効果
片本 宏栗原 伸二島田 保昭
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 52 巻 6 号 p. 1189-1197

詳細
抄録

食餌性脂肪壊死症に対するイソプロチオランおよびファイトステロールの効果を調べるため, 3群のラットを硬化牛脂を含む (HT) 飼料で飼育し, その内2群のラットにイソプロチオラン (50mg/kg) またはファイトステロール (20mg/kg) を毎日経口的に10週間連続して投与した. また標準 (CE-2) 飼料で飼育したラットを対照とした. HT飼料で飼育した3群すべてのラットの精巣上体および腎周囲脂肪組織において, 脂肪壊死の病変が観察された. 脂肪壊死を発症したラットの特徴として内臓脂肪増加型肥満および脂肪組織のトリグリセライドの脂肪酸組成の飽和化が認められた. グルコースの脂質への取り込みは, ファイトステロールを投与したラットの脂肪細胞で最も高かった. HT飼料のみを与えたラットの脂肪細胞において, エピネフリン刺激 (1-100μM) に対する脂肪分解の反応性は見られなかったが, 両薬剤を投与したラットの脂肪細胞では標準飼料で飼育したラットの脂肪細胞と同様な反応性が見られた. 両薬剤を投与したラットの脂肪組織リン脂質の総飽和脂肪酸比率はHT飼料のみを与えたラットのものに比較して低かった. これらの結果から両薬剤は脂肪細胞の膜リン脂質の脂肪酸組成に変化を与え, 脂肪細胞における脂肪分解を促進することが示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本獣医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top